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2012年11月30日

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福島・浜通りから

継続検査が直面する壁

筆者 坪倉正治

写真:データの解析や処理を担当してくれている、当院のスタッフ達。彼らがいなければうちの検査は成り立ちません拡大データの解析や処理を担当してくれている、当院のスタッフ達。彼らがいなければうちの検査は成り立ちません

南相馬市立総合病院で行われている内部被曝検診の結果が公表されました。

2012年の4月から9月末までの半年間で検査を受けられた8656人(高校生以上6977人、中学生以下1679人)が対象です。今回で3回目の公表になります。

結果は南相馬市のウェブサイトにも掲載されています。

他の地域の結果とほとんど変わりません。同一の器械による計測での検出率は大人で徐々に低下傾向です。子供では低い値を維持しています。

検出限界はセシウム137で250Bq/bodyです。検出率が、去年の9〜10月では大人の70%、子供で60%程度であったのが、今年の9月には3.5%と0%になりました(リンク先の図1、図5になります)。

一言で言うと、ほとんどの人でスペクトルが平たく、セシウムの山が見られなくなってきました。

今現在の日常生活での慢性的な内部被曝が極端に抑えられている、そしてそれが維持されていることを示していると思います。

大人で20Bq/kg以上、子供で10Bq/kg以上は3カ月後の再検査を行っていますが、それに該当する人自体が減っており、かつ再検査では今回は全員が前回値より下がっていることを確認しています(図4です)。

そして、値の二局化が始まっています。第32回、ひらた中央病院での検査結果でもご紹介させていただいていますが、ほとんどの方で検出率が下がってくる一方、一部にかなり高い値を出す方がちらほらいらっしゃいます。

来院された方で50Bq/kg以上の汚染が見つかった方が3名。最高値は141Bq/kgでした(図3です)。

実は、この方は震災後数カ月経ってから、南相馬市にいらっしゃった方です。キノコのイメージを悪くしたいとは思いませんが、高度に汚染されたキノコを継続的に食べていらっしゃった方でした。

経験上分かってきた大事なことは、例えば普通にスーパーで食品を買って日常生活を送っている方で、このような高値になる方はいない、ということです。

(1) 荷制限が既にかかった
(2) 値が高いと経験上明らかに分かっているような食べ物を
(3) 未検査で
(4) 継続的に摂取している

方だけです。

例えば、農家の方ではなく、スーパーで購入して生活しているだけ。この生活で、このようなレベルの高さになった方を今のところ診たことはありません。食品との関係については、今後もう少し説明を加えます。

やはり、継続的に検査を続けて行く必要があります。

南相馬市では、この8月から(1回目がどのような値であっても)2回目の検査が出来るようになりました。

他の自治体もきっと、ある程度検査が進めば継続的な検査に移行すると思いますが、私の知る限り、自治体として継続的な検査を打ち出しているのは南相馬市だけだと思います。

ただ、現実的な問題として受診率はかなり低下しています。再検査にいらっしゃった方も、ほぼ全員で値は低下傾向か、未検出を維持しています。

しかしながら、大人で言えば574人しか再検査にいらしていません(図7です)。

市民の方は誰でも再検査を受けられますが、今まで20000人以上検査した中でのこの数です。いかに意識が落ち始めているかを感じざるを得ません。

そもそも、現在の南相馬の人口が4万人だとしても、半数ぐらいしか検査にいらっしゃっていないのが現実です。恐らく他の自治体も早晩同じ問題にぶつかるでしょう。

広報の問題もあると思いますが、医学的な話だけでは、継続的な検査や検診が難しいことを痛感します。生活習慣病の外来や、通常のがん検診などがぶつかる問題に近いように感じています。

少し暗い話しでしたが、継続的な検査を行うための光も見えてきています。結果の総括の部分にありますが、継続検査のための学校検診へのWBC(ホールボディーカウンター)検査導入が進んでいます。今回の公表に明記されています。

わざわざ、予約を取って、仕事を休んで、病院まで連れてきて、という部分を親が負担する必要がなく、定期的にしっかりチェックできるよう、学校検診への導入は非常に妥当だと思っています。全てが解決するのはほど遠いですが、一つずつ進んでいます。

筆者プロフィール

坪倉さん顔写真

坪倉正治(つぼくら・まさはる)

東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。週の半分は福島で医療支援に従事。原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。

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