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脊髄電気刺激療法は、脊髄(背骨の内側をとおっている神経)の外側をとり囲む硬膜に細い電極を入れ、微弱な電流を流すことで刺激を与え、痛みを軽減させるというもの。35年前に米国で開発され、日本では25年前から、けがなどによって神経が傷害されたためにおこる慢性の痛みなどに対し、順天堂大学医学部麻酔科教授の宮崎東洋氏らが実施している。 「痛みが軽減されるメカニズムは、まだはっきりと解明されていませんが、痛みの信号が脊髄をとおり抜ける際に、電気刺激が干渉することで痛みが弱まるという説が有力です。人間の体内の神経には、痛みを伝えようとするはたらきと、痛みを弱めようとするはたらきがありますが、電気刺激には後者のはたらきを助ける作用やマッサージのような効果のあることも指摘されています」と宮崎氏。 個人差はあるものの、もっとも強いときの痛みを3〜5割まで軽減させることができるとされる。 脊髄電気刺激療法は、神経を傷害したことによる痛みのほか、手足の切断後に生じる痛み、事故などで失ったはずの手足が痛む幻肢痛、脳卒中後の頭や手足の痛み、帯状疱疹後神経痛、背骨や腰の手術後に残ってしまった痛み、がんによる痛みなど、さまざまな痛みに効果を発揮している。しかし通常は、「痛みをとるのに有効な従来の治療法をすべて行っても、痛みがとれないような患者さんが対象になります」(宮崎氏) この治療法の長所の1つは、最初に試験的に試してみて、効果が確認されてから本格的に治療が開始される点だ(下図参照)。治療効果には個人差があるが、患者によっては、テストを開始して間もなく痛みをほとんど感じなくなるという人もいるという。痛みの種類によっては8割以上に有効だが、「ほかの治療法で効果のない痛みに対しても、5割程度は改善が期待できる」と宮崎氏は語っている。
宮崎氏は、「手術が小規模で患者さんのからだにかかる負担が少ない点や、退院後にふつうの日常生活を送れるようになる点もこの治療法の長所」と語る。 退院後、患者はリモコンを使って電気刺激の強弱などを自分で調節し、月に1回、外来で定期検診を受ける。手術後、5〜10年で電流発生器の電池を交換する必要があるが、痛みが解消した場合には、電流発生器をとりだすことも簡単にできる。 一方、短所は、リード線や電流発生器を埋め込む手術に高い技術を要する点だ。 「技術が未熟だと、全身麻酔をして背骨を削るなど大がかりな手術になってしまうこともあります」(宮崎氏) さらに、ケースによっては、手術後3〜4年で、電気刺激に慣れて効きめが落ちることがある点も短所としてあげられる。 脊髄電気刺激療法は、1992年より保険適応となり、自己負担額を超えた金額は、申請すればあとから払いもどされる。1998年からは厚労省の定める高度先進医療も適応になった。最終的な自己負担額は9万〜15万円程度となる計算だ。 「どんな治療を受けても痛みがとれないという人は、一度は試してみる価値があると思います」(宮崎氏) 麻酔科外来のある医療施設などで受けることができるが、「日本ペインクリニック学会の認定施設であることが一つの目安になります。また、治療を受ける前に、手術の方法については確認しておきましょう」と宮崎氏はアドバイスしている。
(記事提供:保健同人社)
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