お使いのブラウザはJavaScriptに対応していないか、または無効になっています。詳しくはサイトポリシーのページをご覧ください。
朝日新聞社から|アスパラクラブ|クラブA&A|携帯サービス|Web朝日新聞|サイトマップ|文字拡大・音声
社会 スポーツ ビジネス 暮らし 政治 国際 文化・芸能 ENGLISH マイタウン
天気|住まい|就職・転職|BOOK|健康|愛車|教育|サイエンス|デジタル|トラベル|囲碁・将棋|社説・コラム|ショッピング|be
JavaScriptを有効されますと広告が御覧いただけます
脳卒中などでからだの運動機能に障害を受けた場合はリハビリテーション治療が必要となる。リハビリテーションといえば、歩行訓練や起き上がりなどの動作の反復練習、あるいは錘をつけての筋力トレーニングなどが思い浮かぶ。しかし近年、こうした従来のリハビリテーションとは違う発想で脳にはたらきかける「認知運動療法」が注目されている。
「認知運動療法では、机上の学習と同じように、認知の過程に沿って学習することにより、運動能力を高める方法がとられています」と、10年ほど前から認知運動療法を実施している慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターの理学療法科科長で理学療法士の内田成男氏。 「学校で、先生が問題をだすと、生徒は頭で考えて解答(判断)し、正解を聞いて“そうだったのか”と気づく。そのくり返しによって学習を高めていくこととよく似ています。理学療法士のだした課題について、患者さんは自分のからだを使って考えます」(内田氏) たとえば、目を閉じて、不安定な板の上に、理学療法士の力を借りて麻痺した側の脚を載せ、水平を保ってみる。目を閉じるのは視覚に頼らないためだ。理学療法士が「今、どちら側に傾きましたか?」とたずねると、患者は板に触れた感じや関節の動きなどから「今○○のように動いたので、かかとのほうが傾きました」などと答える。目を開けて実際の状況を確認し、なぜそうなったのを理学療法士が指摘する。 水平を保てるようになったら、今度は錘をつけて、どちら側に錘を載せたのか、どのくらい錘を載せたのか、ということを認識していく。それができたら、さらに安定の悪い板を使って運動学習を高めていく。
「従来の理学療法では、解剖学や神経生理学などをもとに、筋力をつけたり、関節の可動域を増やすことに主眼が置かれてきました。一定の効果もあり、社会的にも認知されていると思います。しかし、リハビリテーションの過程で患者さんが何を感じ、どう考えてきたかということについては、あまり重視されていなかったように思います」(内田氏) からだを使ってイメージすることで運動学習を高めていくという部分こそが、からだを動かすうえでもっとも重要であり、認知運動療法が重視している部分、と内田氏は強調する。 「私たちは、つねに環境と対象物(道具など)を知覚し、これらの相互作用によって得た情報に基づいて中枢神経が指令をだし、それに応じて筋肉は適度な収縮をおこし、からだを動かします(図)」(内田氏) たとえば、自転車に乗っているときには、路面の状況を見なくても、タイヤから伝わる振動によって自然に判断し、ペダルをこぐ強さや速度を調節している。このように外部環境と自分のからだの関係をしっかりと認識することによって、運動学習を高めていくことに、認知運動療法のねらいがある。 不安定板のほかにも、かたさの違うスポンジをからだ全体で押してみて、その違いを認識したり、形の浮きでた文字板に触れて、指先で形の違いを認識するなど、さまざまな方法がある。理学療法士の創造力で個別に課題が設定できることもこの療法の長所だという。 認知運動療法を主体に行う場合には、「麻痺の程度にかかわらず、自分のからだについてきちんと思考できる患者さんが適していると考えられます。ただし、高次脳機能障害をもつ人や整形外科系の患者さんも十分適応になります」という。 「あるいは、別の療法を行って効果がない場合に試してみることもあります」(内田氏) ちなみに、認知運動療法は、健康保険制度上は運動療法に分類され、健康保険の適応になる。
認知運動療法は、1970年代後半にイタリアの神経科医、カルロ・ペルフェッティ(Calro.C.Perfetti)氏が考案したもので、日本には1991年に高知医療学院理学療法学科学生部長で理学療法士の宮本省三氏が紹介した。宮本氏は2000年に広島県立保健福祉大学教授の沖田一彦氏や川崎医科大学(岡山県)助教授の塚本芳久氏らと「日本認知運動療法研究会」を発足させた。現在、日本全国に約850人の会員がいる。
(記事提供:保健同人社)
asahi.comトップ|社会|スポーツ|ビジネス|暮らし|政治|国際|文化・芸能|ENGLISH|マイタウン