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潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症がおこり、腹痛や下痢、血便や粘液便をくり返す病気。発症の原因は、まだ解明されておらず、現在は、5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ、サラゾピリン)やステロイドで炎症を抑え、症状を緩和させる治療法が一般的だ。 大草氏らは、1993年に、潰瘍性大腸炎の病変粘膜に細菌が棲んでいることを発見し、原因を胃・十二指腸潰瘍の場合のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と同様の細菌感染と考え、患者の大腸の粘膜から採取した細菌を培養した。 「分離した20種類の細菌のうち、毒素を発生させていたのは、フソバクテリウムバリウム(注)という嫌気性菌(空気を嫌う菌)のみでした」(大草氏) 続いて、患者の大腸の粘膜にバリウム菌がいて、血清中にはバリウム菌に対する抗体がたくさんできていることを確認。さらに、バリウム菌が産生する毒素である酪酸をマウスの腸に注入すると、潰瘍性大腸炎と同じような潰瘍をつくることも明らかになった。 「これらの実験から、バリウム菌が産生する酪酸が腸の粘膜のアポトーシス=細胞死を引きおこし、潰瘍をつくっていることが確認できました」(大草氏) 大半の潰瘍性大腸炎の原因を、バリウム菌によるものと考えた大草氏らは、1年間かけて臨床試験を実施した。 20人の潰瘍性大腸炎患者を、バリウム菌に有効な抗生物質3剤(アモキシシリン、テトラサイクリン、メトロリダゾール)を飲むグループと、飲まないグループの2つに分けて2週間服用させ、その3か月後と12か月後を比較した。 「3か月後には、抗生物質を飲んだグループでは、下痢や血便などの症状や潰瘍などの炎症がいずれも改善していましたが、飲まなかったグループでは、大きな変化がないか、悪化していました。さらに、12か月後には、抗生物質を飲んだグループでは再発が一例にとどまったものの、飲まなかったグループでは半数が再発しました」(大草氏) こうした研究結果は、今年5月に米国ニューオリンズで開かれた米国消化器学会で発表された。
さらに大草氏らは、一昨年の3月から昨年にかけて、中等症、重症の潰瘍性大腸炎で、ステロイドを使用し、副作用に悩んでいる患者22人を対象に、同様の治療を行った。 「その結果、22人中19人で症状や病態が改善し(有効率86%)、そのうち16人はステロイドの離脱にも成功しました(ほかの疾患のためにステロイドを離脱できなかった2人を除くステロイド離脱率は94%)。新療法が、ステロイドをやめることができないか、ステロイドをもちいてもあまり効果がないような比較的重症の潰瘍性大腸炎にも有効なことが確認できました」(大草氏) 前述のように、これまでの潰瘍性大腸炎の治療は対症療法のため、緩解状態(症状が落ち着いた状態)を長く保つことを目標としていた。 「新療法は、抗原であるバリウム菌をやっつける、いわば根治的な治療法です。しかも、治療費は3種類の抗生物質2週間分の薬価3000円しかかからないため、今後の普及が大いに期待できます」(大草氏) すでに昨年11月から、抗生物質3種をもちいたグループと、偽薬をもちいたグループを比較する大規模臨床試験を実施している(表)。「受けてみたい方は、ぜひ問い合わせてください」と大草氏は呼びかけている。
(記事提供:保健同人社)
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