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近年の急増を深刻に受け止めて、日本婦人科腫瘍学会(植木実理事長・大阪医科大学産婦人科教授)の作成した「卵巣がん治療ガイドライン」が2004年10月20日に発行された。
治療ガイドラインとは、国内外の最新の研究報告を比較、検証し、病気ごとに標準的な治療の方法や考え方をまとめたもの。診療にたずさわる医師が「EBM(科学的根拠に基づく医療)」を実践する際の根拠となる。2000年から厚生労働省が治療ガイドライン作成を積極的に推進してきたこともあり、すでに多くの病気の治療ガイドラインが完成している。「卵巣がん治療ガイドライン」は、各科のがんのなかでは、胃がん、肺がん、乳がん、食道がんに続くものだ。 日本婦人科腫瘍学会が、ガイドライン検討委員会を立ち上げたのは2002年だ。「卵巣がんを最初に手がけたのは、ほかの婦人科がんと比べて、患者数や死亡数が急増しているため(図)」と、委員長で藤田保健衛生大学医学部教授の宇田川康博氏。作成の目的として、5項目をあげている(表)。 食生活の欧米化や少子化など、女性のライフスタイルと密接なかかわりがあるとされる卵巣がんは、近年、40〜60代を中心に、幅広い年齢層で増え続けている。昨年一年間に、国内で卵巣がんと診断された人は6000人。患者数そのものは、ほかのがんに比べればまだ少ない。しかし、婦人科がんのなかでは、ここ30〜40年間に子宮体がんと同様に急増している。しかも、進行してから見つかるケースが多いため、5年生存率が30〜40%と非常に低い。
本ガイドラインでは、卵巣腫瘍のなかでも、上皮性卵巣癌のみならず、悪性胚細胞腫瘍、良性悪性の中間的性格を有する境界悪性腫瘍と、それらの再発腫瘍を対象としている。これらについて、標準的な治療法をフローチャートで紹介し、本文、コメントなどで詳しく説明している。 作成にあたっては、原案をつくる作成委員会と、それを評価する評価委員会を設け、検討がくり返され、原稿作成は、EBMの考えに基づいて行われた。 「医療現場で生じる可能性の高い疑問点の抽出から始め、次に、各項目について国内外の文献をくまなく検索し、吟味したうえで抄録をつくり、その科学的根拠のレベルを判断しています。最後に推奨のグレードについても記載しました」とガイドライン検討委員会副委員長で、東北大学医学部教授の八重樫伸生氏は語っている。 最終案については、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会の承認を得て、後援も受けた。 米国産婦人科腫瘍学会(SGO)副会長で、バージニア大学がんセンター所長のペイトン・テイラー氏は、「本ガイドラインができたことにより、米国、カナダ、ヨーロッパ、スカンジナビア諸国、そして日本で、同様のガイドラインが設定されたことになる。世界中の多くの人に、標準的な治療を受けられる同一の機会が与えられたことの意味は大きい」と語る。 本ガイドラインは、卵巣がんの治療にたずさわる医師だけでなく、患者が自分の受ける治療法を決める際などにも活用できる。 卵巣がんは、自覚症状に乏しく、もっとも見つけにくいがんの一つである。早期発見・治療のためには、年に一度は婦人科検診を受けるとともに、少しの異常にも早く気づけるように、あらかじめ病気についての知識をもっておくことが重要だ。 「ガイドラインは、一般の女性にも広く読んでほしいですね」と前述の宇田川氏は語っている。
(記事提供:保健同人社)
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