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【MEDICALホットニュース】

乳幼児突然死症候群の診断のためのガイドライン

題名 SIDSと窒息死との混同をさける

 厚生労働省研究班(主任研究者:坂上正道北里大学名誉教授)がまとめた「乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome=SIDS)に関するガイドライン」が公表された。

 SIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが睡眠中に急死してしまう病気。日本における乳児期の死因の第3位を占めるが、その診断は非常にむずかしい。厚生労働省では、健康状態や既往歴からは予測不可能で、解剖を行っても原因がわからなかった乳幼児の突然死をSIDSと呼ぶように定めている。しかし、わが国では解剖を行うことが少ないため、虐待死や窒息死が原因不明のままSIDSと診断されたり、逆に、SIDSを窒息死と診断するなどの混乱がおこり、死因をめぐる訴訟が多発している。

 医師の間でも、「窒息死はうつぶせ寝によっておこり得る」とする法医学者と「うつぶせ寝だけでは窒息はおこり得ない」という小児科医の間で意見が分かれてきた。

 研究班は、こうした混乱を鎮める目的で、3年前に組織されて以来、診断のためのガイドラインの作成に向けて研究と検討を重ねてきた。ガイドラインのポイントはのとおりだが、「疑いがある」というだけでSIDSという診断名をつけることはさけ、逆に死因を窒息とする場合は物理的な証拠の提出を明文化した。

 「日本人は、うつぶせ寝=窒息と結びつけやすい傾向がありますが、海外では、うつぶせ寝が単独で窒息の原因になるとは考えられていません」と同研究班のメンバーで名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野教授の戸苅創氏。

 ガイドラインは海外の基準に沿っており、窒息の診断基準を入れたのは、SIDSとの混同をなくすためだという。

 「首が座っていない赤ちゃんでも、うつぶせに寝かせると、反射によって自然に横を向きます。われわれ小児科専門医は数多くの乳児と接していますが、ウォーターベッドやシーツの下にビニールを敷いた場合などは別として、うつぶせ寝だけで窒息するということは、まず考えられません」(戸苅氏)

 また、赤ちゃんの鼻は大人に比べて、肉厚でかたくできているため、うつぶせになっても簡単にはつぶれない。

表 厚生労働省研究班によるSIDSガイドラインのポイント
[1] SIDSの診断は解剖に基づいて行い、解剖や死亡状況調査が行われない場合は「不詳」とする。
[2] SIDSは除外診断でなく一つの病気なので、窒息や虐待などの外因による死との鑑別診断が必要である。
[3] 窒息死とするためには、ベッドの隙間や柵にはさまれるなど直接的な死因につながる証拠が必要で、通常使用している寝具で単にうつぶせ寝であったというだけでは診断されない。


題名 睡眠中に無呼吸からの回復が困難に。8割は家庭でおこっている

 SIDSについては、まだまだ不明な点も多いが、最近では、病気の詳細が少しずつ明らかになりつつある(メモ参照)。

 「原因についても、睡眠や呼吸にかかわる脳幹部の異常が関与しているらしいことがわかってきました。睡眠時には数秒から十数秒の無呼吸状態がおこることがありますが、通常は、自律神経系の反射で呼吸が再開するようになっています。ところが、この反射がおこらないと、無呼吸からの回復が困難になることがあるのです」(戸苅氏)

 従来、SIDSの危険因子として、赤ちゃんの温めすぎ、母親の喫煙、非母乳保育、うつぶせ寝などがあげられてきたが、これらは、もともと脳にSIDSの素因をもった子どもが、危険因子と結びついた場合に、発症のリスクが高まるというものである。

 「このうち、うつぶせ寝については、SIDSの危険因子にはなり得ますが、前述のように、窒息の原因にはなりません」と戸苅氏。

 SIDSの8割は自宅でおこっているという。

 「本当は病気であったのに、窒息死と診断されれば、親は自分自身を責めなければなりません。また、誤解に基づく裁判も減ってほしいと考えます」(戸苅氏)

 来年3月には、日本SIDS学会の診断基準検討委員会が、実際の診断にかかわる法医学や病理学の医師を対象に、より専門性の高い診断基準を完成させる。

【メモ】乳幼児突然死症候群(SIDS)は、原則として1歳未満の乳児におこる(ガイドラインでは、1歳を超える場合でも、年齢以外の定義を満たす場合にかぎりSIDSとする)。日本での発生頻度は4000人に1人と推計され、生後2〜6か月に多いが、まれに1歳以上で発症することもある。男の子にやや多い。

 (記事提供:保健同人社)


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