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厚生労働省は、去る10月11日に脳梗塞の新治療薬「tPA(組織プラスミノゲン)」を、保険適応とすることを承認した。 脳梗塞は、脳動脈が血栓(血液のかたまり)などでつまってしまう病気。血流が止まり、脳に栄養や酸素が送られなくなるため、脳細胞が壊死し、半身麻痺などの障害を残したり、死につながることもある。 今回承認されたtPAは、プラスミノゲンという物質を活性化するもの。新たな血栓をできにくくしたり、できてしまった血栓をやわらかくして溶かして、脳の血流を再開させる。 tPAは心筋梗塞の治療薬としては、すでに承認され、広く使われている。同じ血栓をつくる病気でありながら、脳梗塞に対する承認が遅れた理由について、日本脳卒中学会理事長で東海大学医学部神経内科教授の篠原幸人氏は次のように語る。 「比較的強い筋肉に囲まれている心臓の太い血管は破れにくいが、豆腐のようにやわらかい組織の中をとおっている脳の細い血管で、かつその先の組織が梗塞に陥ってもろくなっている場合、つまった血管に再び血液が流れだすと、脳に大出血を招く可能性がある。危険だと考えられて、脳への使用は、これまで日本では承認が見送られてきました」 しかし近年、欧米など世界40か国では、脳梗塞の発症後3時間以内で、血栓が自然に溶けたり破れたりして生じる「出血性脳梗塞」がまだおこっていない状態の場合は、tPAによる治療を最優先すべきとしている。 「わが国でも臨床試験を行ったところ、発症の3時間以内で、しかも医師がtPAの使用が適切と判断したケースでは、37%の人が3か月以内にほとんど後遺症のない状態で、社会復帰できるというデータが得られました。これは米国の試験結果とほぼ同じです。日本脳卒中学会が中心となり2004年春に発表したガイドラインのなかでも、特定の条件を満たす脳梗塞に対しては、この治療法を強く推奨しています」(篠原氏)
前述のようにtPAには、出血をおこしやすくする副作用があるため、使用の際には、脳の状態を正確に把握するための検査が必要となる。とくに、脳出血を脳梗塞と間違えてtPAを使った場合、重篤な事態を招くのは当然である。 「そこで、日本脳卒中学会はtPA治療を行う医療機関の条件として、CTかMRIによる検査が常時可能であること、この治療に熟知した医師がおり、なおかつ看護師や診療放射線技師と連携したチーム医療が行えること、さらに、脳卒中の急性期患者数が一定数以上で、経験ある施設であることを条件としてあげています」(篠原氏) しかし、このかぎられた医療機関だけではとても日本中の症例に対応しきれないため、学会が製薬会社と共催する講習会に参加した医療機関に対しては、使用許可を与えていく方法をとるという。 「すでに一部の地区では講習が始まっていますが、おそらく1000か所以上の医療機関でtPAが使えるようになるものと考えます」(篠原氏) ただし、「tPAはすべての脳梗塞につねに有効なわけではなく、効果が期待できるのは脳梗塞全体の10%ほどと推定されます」と篠原氏は強調する。 脳梗塞には、(1) 細い血管がつまるタイプ、(2) 太い血管が徐々につまっていくタイプ、(3) 心臓などの病気でできた血栓が脳に飛んで血管をつまらせるタイプがあり、このうちもっともtPAが有効なのは恐らく(3)のタイプだという。 「しかし、もしこのくすりが使えない患者さんでも、脳梗塞の治療は早く始めるほど有効です。可能性がある人は、ためらわずに一分でも早く医療機関を受診してください。現在では、しかるべき治療をすれば、脳梗塞を発症した人のうち亡くなるのは10%以下です。しかし、残りの9割のうち多くの方には後遺症が残ります。この機会に“脳卒中=今でも怖い病気だが早期治療は有効”ということを忘れないでいただきたいですね」(篠原氏)
(記事提供:保健同人社)
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