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【MEDICALホットニュース】

ニューヨークで全面禁止の悪玉脂肪酸 トランス脂肪酸に迫る

 米国・ニューヨークでは、トランス脂肪酸の含有量が多い調理油や食材を、市内のすべてのレストランやファストフード店で原則的に使用禁止にしたと伝えられる。これを受けて日本国内の大手外食チェーンでも、大豆油など代替油に切り替える動きがある。トランス脂肪酸とは何なのか、栄養学の専門家に話を聞いた。

大量摂取で心臓疾患のリスクを高める

イラスト

 一般に、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸という言葉なら耳にしたことがあっても、トランス脂肪酸という言葉にはあまりなじみがないのではないだろうか。

 日本女子大学家政学部食物学科助教授で栄養学が専門の五関正江氏は、次のように説明する。

 「トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一つです。マーガリン、お菓子などを作るときに使うショートニング、これらを原料として製造される食品、高温で加熱した油などに含まれています」

 五関氏によれば、トランス脂肪酸については、米国での疫学調査の結果、多く摂取することにより、心臓疾患の危険性を高めることがわかったという。

 「トランス脂肪酸を多くとると、悪玉といわれるLDLコレステロールを増加させる一方、善玉のHDLコレステロールを減少させて、心臓疾患のリスクを高めると報告されています。この点は、飽和脂肪酸と同じですね」と五関氏。

 こうしたことから、米国では、食品の栄養成分表示欄に、飽和脂肪酸、コレステロールに加えてトランス脂肪酸の含有量も明記することが義務づけられたという。


大量に摂取しなければ動脈硬化などの心配は少ない

 「日本では、米国ほど問題にはならないと思います」と五関氏はいう。理由は2つ、マーガリンなどの製造過程の違いとトランス脂肪酸の摂取量の違いだ。

 「マーガリンなどの製造には硬化油が使われますが、硬化油は液体油に水素を添加して硬化(固形化)させます。このとき、飽和脂肪酸とともにトランス脂肪酸も生成されます。米国では、マーガリンやショートニングの製造に硬化油のみを用いていますが、わが国では未硬化植物油を使ったり、硬化油の配合を少なくするなどの工夫がされています。その結果、油脂中のトランス脂肪酸の含有割合は、米国の20%以上に対して、わが国は15%以下のものがほとんどです」と五関氏。

 また、トランス脂肪酸の一人一日あたりの摂取量は、米国の5.8g、エネルギー比(摂取エネルギーに占める割合)2.6%に対し、わが国は1.56g、0.7%と低い値にとどまっている(表参照)。

 「米国では、パンが主食ということもありますが、たっぷりとマーガリンをつけて食べるなど高脂肪食にかたより、トランス脂肪酸を大量に摂取してしまい、動脈硬化などの危険性が指摘されるのです。その点、通常の日本人の食事なら、トランス脂肪酸の摂取量は少なく、健康への影響は小さいと考えられます」と五関氏は話す。

多様な食品をかたよりなくとることがいちばん

 今のところ日本では、トランス脂肪酸の悪影響を心配する必要は少ないというものの、食生活の欧米化による健康への影響は、ことあるごとに指摘されている。

 「トランス脂肪酸の摂取量は少ないほうがよく、トランス脂肪酸を多く含むケーキや、ポテトチップスのようなスナック菓子を食べすぎないように注意が必要でしょう」と五関氏。

 「ただし、油脂類は食べてはいけないということではありません。健康を維持するには脂肪も必要です。量と質を考えてとりましょう。問題なのは一つの食品ばかりを多く摂取することです。成人では野菜は1日350g以上食べること、そして多様な食品をかたよりなくとるように心がけましょう」と五関氏はバランスのとれた食事がもっとも大切だと話している。


表 トランス脂肪酸の摂取量(1人あたり)
  1日あたり摂取量(g) 摂取エネルギーに
占める割合(%)
日本(平均) 1.56 0.7
米国(成人平均) 5.8 2.6
EU(男性平均)
  (女性平均)
1.2〜6.7
1.7〜4.1
0.5〜2.1
0.8〜1.9
内閣府食品安全委員会ホームページより
 「暮しと健康」2007年3月号より

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