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2012年12月2日

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町医者だから言いたい!

【959回】 いわゆる「抗がん剤」の思い出
抗がん剤の止めどき・その23

筆者 長尾和宏

いわゆる抗がん剤について、ごく簡単にご紹介します。

 1 アルキル化剤
    乳がんに使われるエンドキサンなど。
 2 代謝拮抗薬
    有名な、5−FUやTS−1をはじめ、メソトレキセートやアリムタなど。
 3 プラチナ製剤
    シスプラチン、パラプラチン、オキサリプラチンなど。
 4 植物アルカロイド
    オンコビン、タキソール、タキソテール、カンプト、ペプシドなど。
 5 抗がん性抗生物質
    アドリアシン、ファルモルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンなど。
 6 有機化合物
    乳がんに使われるハラヴェン・

こう書きながら、私が使ったことがない薬は3割あります。
上に挙げた7割の薬は、私自身、確かに使いました。
今、生きておられる患者さんは、数名しか顔が浮かびません。

早期胃がん手術後に、半年ないし1年間、
TS−1を飲んで頂いた方がいました。
何人かは、生きておられます。

裏を返せば、それ以外の患者さんは、亡くなりました。
なんだ、それじゃあ効かないじゃないか!と
言われる方は、抗がん剤の本質を分かっておられません。

抗がん剤の本質は、延命治療であることです。
早期がんにダメ押しで投与する場合は除いて
大半は、がんにおける延命を目的とするお薬です。

もうひとつは、これらのお薬は、全身に作用することです。
がん以外の正常組織にも作用するお薬なのです。
そう、副作用で悩むのは、これらの抗がん剤なのです。

正直、これらの薬は、本当に必要なのかな?
という思いがこみ上げてきます。
理屈ではなく、個人的な経験が目の前に蘇ってきます。

昔、これらのお薬は、どれくらいしんどいのか
自分に試してみようと思ったことがありました。
しかし、これらのお薬は自分には入手できなかった。

何人かの抗がん剤の専門家に聞いてみました。
「これらのお薬を自分に投与したことがありますか?」
YES、と答えた医師を私は知りません。

胃カメラを自分自身が受けた時、ショックでした。
そうそうバリウムを飲んだ時も、ショックでした。
こんな苦しいことを患者さんにしているのか・・・

抗がん剤は、それさえ知らずに投与してきました。
こうやって羅列しながら、懺悔の念にかられます。

私が抗がん剤が嫌いになったのは、これらの薬を
患者さんに投与して、何一ついい思い出が無かったから。

そんな単純なことを思い出しながら書いています。

【PS】
昨日は、介護界の大御所である三好春樹さんを
尼崎にお迎えして講演後、
地域で最期を迎えることについて議論しました。

三好さんとは毎年、かいご学会でご一緒していますが、
知れば知るほど、深い方だとあらためて思いました。

今日は、岡山でお医者さん対象に講演をしています。

筆者プロフィール

長尾さん顔写真

長尾和宏(ながお・かずひろ)

1958年、香川県生まれ。1984年に東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。阪神大震災をきっかけに、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業、院長をしています。最初は商店街にある10坪程度の小さな診療所でした。現在は、私を含め計7人の医師が365日24時間態勢で外来診療と在宅医療に励んでいます。趣味はゴルフと音楽。著書に「町医者力」「パンドラの箱を開けよう」(いずれも、エピック)などがあります。ツイッターでもつぶやいています。

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