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医局の窓の向こう側   


新臨床研修制度

2007年06月25日

 言うまいと 思えど今日の 忙しさかな!! なんでこんなに忙しいんだ!

イラストイラスト:木村りょうこ

 いいか、私は医者なんだぞ。しかも大学医局から出て市中病院にいるのは「臨床が好き」だからだ! 研究も嫌いじゃないけど、今ひとつぱっとしないし(ううううう、哀号)、医者の三つの業務「臨床」「研究」「教育」のうち、一番不得意なのが「教育」なんだぞ。だからこうして市中病院にいて、大学のように教育の比重の重いところは避けているというのに。それなのに、なんで私が「臨床研修部長補佐」なんだ!!(部長でないところがいちいち微妙だ)

 ぜぇぜぇぜぇ…。失礼しました。思わず愚痴を皆様にぶつけてしまいましたが、何とぞお許しを。昨年夏過ぎに急遽「臨床研修部長補佐」を拝命つかまつった私。来年度研修医獲得(注1)というミッションインポッシブルのために「臨床研修強化の切り札」(という名の足軽)として、お手当てもないままがんばらされている。提出書類は山のよう、休日出勤して研修説明会へ院長とともにおでかけ。近隣の研修部長会議にでかけ、面接だけのマッチング試験を行って「うちの病院に来てね!」と張り付いた笑顔で学生様に媚びを売った。

 マッチング。お見合いだ。お見合いは、お互い条件の合った「釣り合いの取れた」相手と出会える理にかなったシステムなんて思われているけど、結局、条件を提示したとたんに、売れる、売れないがはっきりしてしまう。売れる人、売れるところはとことん売れ、売れ残りはどこからも相手にされない。誰だって、都会の華やかなところがいい、誰だって給料の良いところがいい、誰だって親切に指導してくれるところがいい。見栄えが良くて、お金持ちで、優しい人が人気だ、なんてまさにお見合いそのものだった。うちの病院なんて完全な売れ残りだ。

 いや、日本全国で「研修医をマッチングで選べる」ところなんて、数えるほどしかないんじゃないかしらん。東京の、誰もが聞いたことのある名の通ったところだけが、「お見合い相手」として研修医を選別できて、ほとんどのところは(地方の大学病院も含む)、とにかくマッチングに来てくださった方にそのままご希望いただけるようにお願い申し上げるんじゃないだろうか。比較的大都市近郊の市中病院であるうちですら、この体たらくだもの。

 来月から来る研修医のために、待遇整備と研修システム、受け入れ各科との最終調整をした。今年は10人募集したところ、3次募集でようようお一人様獲得できた大切な研修医様なのだ。まさにミッションインポッシブルであった。

 今回の研修医獲得のために、新しい宿舎を用意し、給与も上げた(う、うらやましい! 私が研修医だった頃は…)。当直回数も、当直時のdutyも減らした。これが本当に「好条件」なのか、本当のところよく分からないけれど、とにかく「研修医が喜びそうな」条件を整備。宿舎候補回りをして、家賃交渉。不動産屋のおっちゃんや家主さんとケンケンゴーゴー。最後には、この地区の医療状況を切々とご説明申し上げ、これで医師確保に繋がるのだとなんとか家賃をお安くしていただいた。当初の予算で入れる物件ではとても若者の心は惹き付けられない。

 各科の部長には平身低頭。「どうか怒鳴らないでください。懇切丁寧にご指導ください。でも、夕方5時になったらフリーにしてあげてね」「緊急処置には呼び出すなってこと?」「はぁ、まぁ、ケースバイケースですが、基本的には」「真田先生、そんなので研修って言うの?人もいないのに」「おっしゃる通りで」。自分のためにもしたことのない調整。今までの研修が万全だったとは言わないけれども、新臨床研修制度(注2)が大変に良いとも思えない。それでもやらねばなるまい!新しい仲間を迎えて来月から新体制。研修医君にも登場してもらいますよ!

注1)研修医:医師免許取得後、働きながら実技などを学んでいる駆け出し医師。2004年4月に新臨床研修制度が実施されるまでは、卒業後も大学医局に在籍し、研修病院やその後の勤務先を半ば強制的に指定される医師が大半だった。

注2)新臨床研修制度:研修医の低賃金過剰労働問題などを受け、2004年度から実施。医師免許取得後最低2年間の研修が義務化されたが、研修医が自ら研修先病院を選び、待遇面でも保護されるようになった。

筆者プロフィール

真田 歩(さなだ・あゆむ)
 医学博士。内科医。比較的大きな街中の公立病院で勤務中。診療、研究、教育と戦いの日々。開業する程の度胸はなく(貯金もなく)、教授に反発するほどの肝はなく、トップ研究者になれる程の頭もない。サイエンスを忘れない心と患者さんの笑顔を糧に、怒濤の日々を犬かきで泳いでいる。
 心優しき同僚の日常を、朝日新聞社刊医療従事者向け月刊誌で暴露中。アサヒ・コムにまで載っちゃって、少し背中に冷たい汗が・・・。

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