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医局の窓の向こう側   


指導医講習会1

2008年01月25日

真田歩

 臨床研修副部長を仰せつかり、研修医様の指導にあたり始めたものの、実は指導医講習を受けていなかった私。真田、行ってきました2泊3日の指導医講習会。くそ忙しい日常臨床業務の合間、唯一のお休みを「研修」にあて、入院患者の急変も対応せず研修施設に泊まり込み。これまでの医者人生、いつでもポケベル、携帯電話で病院と連絡がつくようにし、医業を生活の中心に置いてやってきた。それが携帯電話を原則禁止され(もし病院に戻るようなことになったら研修の補習があるんだって)、病棟への応答も原則禁止された。そのような状況でバックアップしてくれるほど勤務医がいるような病院なら良いけど、うちの病院なんか産婦人科医1名で、その先生も参加しているけど、一体どうするつもりなんだろう? っていうか、どうなってるんだろ? そんなにまでして受けるのが指導医講習会だ。都合48時間、合宿施設に泊まり込み、外部と遮断され、当局が理想とする「指導医」になりきるために、研修! 研修! 研修!

イラスト

イラスト:木村りょうこ

 2泊分の着替えを詰め込み、重い足を引きずって家を出て、○×研修センターの玄関前に立つ。あ、ちなみに、お着替えは「普段着でお越し下さい」と妙に力の入った説明があり、ジーンズやらなんやらの本当の普段着。私はユ○クロで決めてみました。

 玄関横には毛筆も黒々と「臨床研修指導医講習会様2階大会議室」と書かれている。受け付けを済ますと、厚さ15センチはあろうかというファイル、名札(名前印刷済み)を渡される。大会議室にはすでにたくさんの人が集まっていた。もちろん、県下いろいろな施設から集まるのでなんとなく同じ施設からの参加者が小さなグループを作っている。きょろきょろ見渡すと当院の耳鼻科部長もいらっしゃる!! 正直、誰だか一瞬わからなかった。中年過ぎると普段着がなんだか見苦しくなりますね。いつもネクタイびしっとスーツはかっこよかったんだけど、カジュアルはなんていうか、単にそこらの「おじさん」です。

 実はこの「おじさん化計画」は画策されたものであることが、講習会始めの挨拶の部分でわかることになる。

 一通りの説明の後、全員がいすに座って輪を作る。そう。あのハンカチ落としのようないすのセッティング。なつかしいやら、小恥ずかしいやら、なんだか複雑な気分になり始める。妙に張り付いたような笑顔を絶やさないディレクターがご挨拶とこの講習会の説明。「今回の講習中は、お互いを○○さん、と呼び合いましょう。役職や卒年は関係なく、ましてお互いを堅苦しく○○先生と呼び合うことのないようにしましょう。そのために本日は普段着でご参加いただきました。ですから私もこのように……」。このディレクターと呼ばれる御大は御年70をお迎えになろうかというどこぞのお偉い先生。普段私のような下々がお目通りかなうような方ではない。この偉い先生がこの講習会を文字通りdirectするのだ。率先して例を示すために活動的なカジュアルを表現されたであろうジャンパー姿が少々痛々しい。確かにスーツ姿の部長に向かって○○さんとは呼べないけれども、なさけない普段着ならなんとかなりそう。そして高らかに講習会開会宣言! 「とりあえずとなりの人の名前を呼んで、お互い、元気に返事をしてみましょう!」

 げげげげげ〜! なんだ、この保育園のような誘導は? なんとなく病院毎に集まっていたために、私の横は耳鼻科部長。「Y……さん」。思わず小声になる。「はい」部長はうれしそうだ。「さ、真田さん?」「へい」。うわああ! 恥ずかしさ倍増!!  でも素直に従ってしまう私たち。向こうには××病院の副院長がいるけど、あっちは大丈夫かしらん? 主催者側のもくろみとは別に、妙な空気に包まれながら講習スタート。読者の皆様! 受けた方もこれからの方も、とくと真田レポートご覧あれ!!

筆者プロフィール

真田 歩(さなだ・あゆむ)
 医学博士。内科医。比較的大きな街中の公立病院で勤務中。診療、研究、教育と戦いの日々。開業する程の度胸はなく(貯金もなく)、教授に反発するほどの肝はなく、トップ研究者になれる程の頭もない。サイエンスを忘れない心と患者さんの笑顔を糧に、怒濤の日々を犬かきで泳いでいる。
 心優しき同僚の日常を、朝日新聞社刊医療従事者向け月刊誌で暴露中。アサヒ・コムにまで載っちゃって、少し背中に冷たい汗が・・・。

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