現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 健康
  4. 医療・病気
  5. 記事

がんと向き合い前へ一歩 看護師とその卵、それぞれの春

2008年4月11日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリをYahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真小児がんを克服し、看護専門学校に入学した土井めぐみさん=長崎市写真講演終了後、友人たちと談笑する山内梨香さん(中央)=盛岡市内で

■抜けた髪で学校に

 小児がんを克服した長崎市の土井めぐみさん(18)が10日、看護師の夢をかなえるため看護専門学校に入学した。小学4年で入院した時、多くの看護師に支えられた経験から、自分も同じ道を歩もうと決めた。目指すのは小児科の看護師。治療や病気に対する不安を乗り越え、新たな一歩を踏み出す。

 長崎市医師会看護専門学校での入学式。黒のスーツ姿で出席した土井さんの表情は晴れやかだった。「看護に対する知識や技術だけでなく、患者に対する愛情を持ってください」。奥保彦校長の式典の言葉を真剣なまなざしで聞いた。

 小学4年の夏休み、悪性リンパ腫と診断された。左あごあたりのリンパ節が腫れ、右の股関節が痛んだ。

 手術後、抗がん剤治療で髪の毛が抜け始めた。大好きだったロングの髪をばっさり切り、初めてショートヘアにした。その髪も1カ月ですべて抜け落ちた。「退院して学校に行った時、友達はどう思うかな」と悩んだ。

 そんな時、いつも変わらず接してくれる看護師が支えになった。一時的に宿泊帰宅できる時、看護師からおつかいを頼まれた。特別扱いされていない感じがうれしかった。

 点滴液が残りわずかになり、交換を頼むためにナースコールを鳴らそうと思っていると、察したように必ず来てくれる看護師。「よく頑張っているね」と言って、母と一緒に泣いてくれた看護師。「この人たちに任せていいんだ」という安心感があった。

 半年で退院したが、その後も治療のため数週間の入退院を繰り返した。小学6年になるまで、髪の毛が抜けた頭に帽子をかぶる生活が続いた。

 新聞の死亡欄で同じ病名を見ると不安になった。自分がどんな病気にかかっているのか、生存率はどれくらいなのか。インターネットや本を読んでもよくわからなかった。日常の日々から不安が消えることはなかった。

 高校生になったころ、主治医から「退院して5年たつし、もう大丈夫だよ」と言われた。

 心がほっとして、退院後からずっと心に温めていた夢に改めて思いをはせた。「看護師になりたい」。不安な日々を送っていたころ、看護師になれば病気のことが自然とわかるだろうと思った記憶も後押しした。母は「激務だから」とほかの仕事をすすめた。でも、看護師以外には考えられなかった。

 「病気は大変だったけど、自分にプラスになったことは多い。痛みや不安も含め、患者さんの気持ちを理解できる看護師になりたい」。夢を実現する歩みが始まった。(貞国聖子)

■がけっぷちナース

 乳がんを患い、肝臓や骨への転移も経験した盛岡市立病院の看護師、山内梨香さん(34)が今月下旬、自らの闘病生活をつづった本「がけっぷちナース がんとともに生きる」を自費出版する。入院中、がん患者の体験談に勇気づけられたという山内さんは、自身の経験ががんと生きる人たちの励みになればと願っている。

 05年春、山内さんは左の乳房にコリッとしたしこりを見つけた。当初は良性の腫瘍(しゅよう)と診断され、安心したが、その後の検査で悪性と判明した。

 「患者さんへの告知には何度も立ち会ったのに、自分のこととなると頭が真っ白になり、ずっと泣いていた」。告知を受けた時の様子をそう振り返る。

 しばらくはショックから夜も眠れず、食事ものどを通らなかった。受診した精神科で、「がんになった現実を受け止められない」と打ち明けると、がんを患ったことのある看護師が「受け止められなくていい。今は周りの人にいっぱい甘えてください」と言ってくれた。

 「がんを乗り越えようと頑張らなくていい」と思うと気持ちが楽になり、この年の12月、約2センチの腫瘍の摘出手術を受けた。乳房は温存することができた。

 抗がん剤や放射線の治療を経て、翌夏には職場に復帰した。しかし、07年3月に肝臓、同10月には左大腿(だいたい)骨への転移がそれぞれ見つかり、再び闘病生活が始まった。

 告知からの辛い日々を支えてくれたのは、家族や恋人、友人たちだ。

 抗がん剤治療で吐き気や倦怠(けんたい)感がひどく、電話にも出られない。そんな時、写真嫌いの恋人(29)が顔写真を携帯メールで送ってくれた。髪が束で抜けた時は、薄毛を気にする兄(38)に「おれは永遠に(髪の毛に)サヨナラしないといけないけど、お前はまた生えてくる」と言われ、思わず笑顔になった。

 もう一つ、山内さんを支えたものがあった。がんを克服した人やがんと生きる患者の体験談を集めた本だ。

 世間では「がん=死」のイメージがまだ強いなか、「治った人もいるし、がん患者って意外と元気なんだ」と励まされた。自身も誰かの力になりたいと闘病記の出版を思いついた。

 昨年12月から再び職場に復帰。半日の短縮勤務をしながらホルモン治療を続けている。ただ、がん細胞が体内から消えたわけではなく、これからも不安な日々は続く。

 「がけっぷちな人生だけど、前を向いて生きていこう」。自身と、がんと生きる人へのメッセージを本に込めた。

 244ページ。1500円(税込み)。問い合わせは川口印刷工業(019・632・2211)へ。(南宏美)

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

病院検索

症状チェック

powered by cocokarada

全身的な症状 耳・鼻・のど 皮膚 こころ・意識 首と肩・背中や腰 排便・肛門 排尿 頭と顔 目 口内や舌・歯 胸部 腹部 女性性器 男性性器 手足

総合医療月刊誌「メディカル朝日」