病院に外出を許され、妹と遊ぶ崚介君=家族提供
崚介君の母親と会い、生前の写真を見つめる楽天の田中将大投手(右)=神戸市
小児がんと闘った4歳の長男に、献血という「アンパンマンのエキス」をくれてありがとう――。神戸市の母親(34)が献血ルームのノートにつづったメッセージに共感の輪が広がっている。プロ野球・楽天の田中将大投手(20)も心を打たれた一人。10日に市内であった献血PRイベントの後に母親と会い、献血の意義をかみしめた。
髪の毛が一本もない男の子が妹と抱き合っている。「こんなにいい笑顔の子が……」。田中投手は母親が差し出した写真を手にして声をつまらせた。
男の子は崚介(りょうすけ)君。小児がんで10カ月の闘病の末、01年7月に亡くなった。治療中は赤血球や血小板の輸血を重ねた。母親は「何もしなければ余命1カ月と宣告されたのに、10カ月も生きられたのは輸血のおかげ。崚介との思い出と感動を残せた」と話す。
亡くなった直後、献血ルームのノートに書いた。「あの子は輸血されると元気になることを知っていて、『アンパンマンのエキスだ〜』と言っていました」「献血していただきました皆様(略)ありがとう!」。崚介君の写真も張った。メッセージは献血への協力を呼びかける広報に使われた。06年にはインターネット上で話題となり、全国から励ましが寄せられた。
田中投手は今年の「はたちの献血」キャンペーンのイメージキャラクターになって、崚介君を知った。「それまでは献血に関心がなかったのに、自分の考えが大きく変わった。協力したいと思うようになったし、一人でも多くの人に献血の必要性を訴えたい」
日本赤十字社によると、1年間に必要な献血協力者は500万人だが、06、07年は目標に届かなかった。少子高齢化で若者が減っていることも理由だ。特に風邪がはやる今の季節は血液の確保が難しい。
母親は2年前から、崚介君の闘病体験を講演している。「苦しむ我が子に何もしてやれず、祈るような思いで血液を待っていた。そんな患者と家族がいることを多くの人に知ってほしい」。日本赤十字社は近く、崚介君の映像をホームページに載せ、献血への協力を呼びかけるという。(山田菜の花)