医薬品を販売する新たな制度として、09年度から「登録販売者」という資格ができる。都道府県が行う試験に合格すれば、薬剤師がいない店舗でもかぜ薬や胃腸薬など主な市販薬を売れるようになる。薬剤師不足に苦労するドラッグストアなどはこれを事業拡大につなげようとする一方、「置き薬」を扱う伝統的な配置薬業界には影響を懸念する声もある。
新制度をいちはやく活用しようとしているのが、ディスカウントストア大手のドン・キホーテ(東京都新宿区)だ。子会社の従業員も含め約250人が、今年1月からインターネットなどによる「eラーニング」で資格試験に向けて勉強している。
同社は多い時には全国約60店で薬を販売。だが、薬剤師不足のため現在は約150店中13店に縮小している。うち11店では薬剤師がテレビ電話で客に対応する方法で、深夜早朝も薬を売っている。
薬局などが閉店している深夜早朝営業が同社の特徴だけに「医薬品販売へのニーズは強い」。そこで09年度以降は登録販売者を配置して、薬を扱う店舗を増やす方針だ。
東海地方を地盤に約640店舗を展開するスギ薬局(愛知県安城市)も、グループ全体で約1100人の従業員が受験予定。子会社のディスカウントストアで医薬品を販売していない約70店に登録販売者を置き、薬も扱う新形態の店舗に転換するという。マツモトキヨシ(千葉県松戸市)も従業員約2千人の受験を計画している。06年度から大学薬学部が6年制となり、12年春までは新卒者が少ないことへの「備え」でもあるという。
だが、大手スーパーが医薬品販売に参入してきたら「仕入れ価格などで太刀打ち出来ない」とスギ薬局。そこで最終的には薬剤師が常駐し、ハイリスクな薬の販売や調剤もできる店舗を増やして差別化を図る考えだ。
ただ、現在は医薬部外品しか販売できないコンビニエンスストア各社は「(登録販売者の)人材確保が難しい」(ローソン)などとして、今のところは静観の構えだ。
新制度の影響は、「売薬(ばいやく)さん」で知られる富山県の配置薬販売業界にも及んでいる。
富山市の富山国際会議場で5月下旬、配置販売業者ら約400人が登録販売者資格の模擬試験を受けた。白髪頭の受験者も少なくなかったが、みな真剣な表情でマークシートの答案用紙に向かった。
既存の業者は経過措置として09年度以降も薬を販売できるが、登録販売者に比べると扱える薬は限られる。厚生労働省が05年に作成した資料によると、一般用医薬品の代表的な485成分のうち、登録販売者が扱えるのは474成分。これに対し配置販売業者は270成分にとどまる。
このため富山県薬業連合会は「消費者の信頼を得るには登録販売者の資格が必要」として受験を勧め、研修会や模擬試験を開催している。
だが、県内を拠点とする配置従事者約1700人のうち約65%は60代以上(県くすり政策課調べ)と高齢化が進んでいる。関係者からは「資格取得が負担になって廃業を選ぶ人も出てくるのでは」との声も聞かれる。(増田愛子)
◇
〈登録販売者〉 改正薬事法で09年度から、一般用医薬品の販売には薬剤師か登録販売者の配置が必要になる。医薬品のリスクに応じた消費者への情報提供や、販売者の資質確保が目的。登録販売者の資格試験では、医薬品の主要成分の効能・効果、副作用などの知識が問われる。受験には1年以上の医薬品販売の実務経験などが必要。第1回試験は8月から各地で始まる。