石綿健康被害救済法(石綿新法)で石綿肺を救済対象疾患として追加するかを検討するため、環境省は来年度、この病気と診断された患者の事例を集めて、アスベスト(石綿)の暴露歴や症状などを解析する調査に乗り出す方針を固めた。10年度中に実施する制度の本格見直しに結果を反映させる。
石綿肺はじん肺の一種で、アスベストが原因。ひどくなると重度の息切れや呼吸不全のため酸素吸入が必要となり、肺炎などを合併する場合もある。労災補償の対象だが、一般住民などそれ以外を救済する石綿新法では中皮腫と肺がんに疾病が限定され、対象となっていない。職場での暴露歴が判明しやすい労災と違い、医学的な所見だけではアスベスト以外が原因の場合との判別が難しいためだ。
全国にどれぐらい患者がいるか不明だが、環境省は「長期間の暴露による代表的な職業病で、一般環境での発症例の報告はない」としてきた。
だが、06年の新法施行当初から、患者や支援団体などが「労災で救われない建設業の『一人親方』などの個人事業者で重症患者がいる」と救済対象に含めるよう求めてきた。石綿を扱う施設が多かった大阪府泉南地域や兵庫県尼崎市など6地域で環境省が昨年度に実施した調査でも、労働現場と関連する暴露歴が確認できなかった803人中、石綿肺の可能性がある所見が34人(4%)で見つかっている。政府・与党内にも「重度の石綿肺患者は救済すべきだ」との声が上がっていた。
このため環境省は、全国の医療機関で石綿肺と診断された事例を集めて、アスベスト以外の原因の場合との判別方法など救済対象に追加するにあたって検討すべき課題を2年がかりで整理し、認定基準をつくる上での参考にする。事業費を来年度予算の概算要求に盛り込む。
環境省は石綿肺のほか、良性石綿胸水やびまん性胸膜肥厚などのアスベスト特有の病気についても、症例はさらに少ないとみられるものの、救済対象として追加すべきか検討する。(桜井林太郎)