母親に連れられてクリニックを訪れた男児に簡易検査をする和田院長=9日午後、東京都練馬区
インフルエンザへの感染を素早く調べることができる簡易検査キット=大阪市

新型の豚インフルエンザの流行のピークを前に、医療機関を受診する患者が増え、インフルに感染したかどうかをみる簡易検査キットが不足し始めている。早めの検査を希望する「心配患者」が多いことも一因だ。キットを有効利用しようと、検査結果が出にくい段階では使わず、「節約」に努める医療機関も目立ち始めた。
東京都練馬区のわだ内科クリニックでは今月に入り、受診者が急増した。それに伴いキットが減り続け、一時は残り10人分を切った。和田眞紀夫院長(52)は「漫然とキットを使っていたらなくなってしまう」と語った。
医薬品卸会社「東邦薬品」(東京)によると、キットは8月中旬から品薄状態となっている。8月の販売実績(金額)は前年同月比で約120倍と大幅に増加。また、キットを生産している検査薬メーカー、ミズホメディー(佐賀県)の場合、フル稼働で3倍近い増産を続けているが注文に追いつかないという。
厚生労働省によれば、キットを製造・輸入する国内メーカーは15社。同省が8月、来年3月までの生産見通しを業界から聞き取ったところ、昨年同時期の2.2倍の2800万回分だった。発症者は約2500万人にのぼると推計されているが、「心配患者」を含めるとその2〜3倍が受診するとの予測もあり、キット不足が懸念される。
もっとも、タミフルなどの治療薬の処方にキットの検査は必須ではない。だが、平熱でも検査を受けないと心配だったり、勤務先に出社するため「陰性」の証明が必要だとして検査を求めたりする人が目立つようになった。
こうした事態を受け、キットの利用方法を工夫し始めた医療機関もある。発症初期はキットで検査しても「陽性」と出にくい。そのため、受診初日は帰宅させ、翌日も高熱やせきが続くなら再度訪れるよう指示。明らかに感染の疑いが強い濃厚接触者には検査をせずにタミフルを処方するなどしている。
キットは感染の有無を正確に見分ける能力はさほど高くなく、検査結果をあてにしすぎると必要な治療が遅れる可能性もある。厚労省新型インフルエンザ対策推進本部は「キットはあくまで補助的なもの。ただ、診断には役立つので供給態勢を維持していきたい」としている。(稲垣大志郎、浅見和生)