イラスト:阿部昭子
春である。桜も咲いて、すっかりSpring has come!な気分だ。春が来たのは季節だけではなかったようで、ここのところパタパタと2組の結婚式にお呼ばれ。いやあ、めでたい。最近の結婚式は趣向に凝る人もいて、全く知らなかったお相手(自分が新郎の客の場合は新婦をあまり知らず。あるいはその逆)の来歴なんかも披露宴の間に十分わかるように説明される。とはいえ、ご多分に漏れず「これほど見事なカップルはいない」というほどのすばらしい人同士の組み合わせに落とし込んであることが多いんですけどね。
披露宴の丸テーブルで仲人による新郎新婦の紹介などを拝聴する。う〜ん、いいカップルだ。幸多かれと願う。新婦は女医さん。彼女の方が収入的には多い。その事から「藤原紀香」の結婚を思い出した。テレビ中継を見ながら、「あ?紀香ちゃんもお嫁に行くのねぇ。奇麗だわぁ。幸せそうだわぁ。いろいろ言われているけど、やっぱり女は自分の一番好きな人と結婚するのが幸せなのよねえ」などと、思わずホロッとしてしまった私。藤原紀香、いろいろな意味で幸せになってほしかったのよね。もちろん、私が藤原紀香のファンであったからというのもあるんだけど、それだけじゃなくて、「経済的に自立した女の結婚」の幸せな成功例としてある種のロールモデルになるんじゃないかと期待していた。格差婚だのなんだのと言われていたけれども、だからこそ「そんなものは2人の愛には関係ない」と、世間の冷たい予想をその長いおみ足でけ散らしていただきたかった。
ところが、紀香ちゃんのおみ足は、「あの結婚は破綻する」という世間の揶揄をけ散らすどころか、ご自身の結婚生活を一足でまたいでしまった。あっという間の離婚報道。びっくりしたなぁ。あの感動の結婚式ってついこの前だったような気がするもの。陣内君の記者会見も、成田でのリポーターへの返答も、お二人ともさばさばしていたのだからよいのだけれど、あまりにあっけないと言えばあっけなかった。本日の新郎新婦も、新婦の方が収入が上の格差婚。私はちょっと心配になる。やっぱりうまくいかないのかな?
「女に経済力があるとすぐ離婚になっちゃうからなぁ」
隣の客人の声に見透かされたのかと驚いた。私のお隣には新郎側のお客として初老の紳士がお座りになっている。きっちりとしたディレクタースーツがとてもよくお似合いでかっこいいおじさまだと思っていた。「このカップルは長続きしないな。私にはわかる!」
縁起でもないことをこのおじさま、来賓スピーチに飽きてきたらしく隣の私に小声で話しかける。結婚しても女医として仕事は続けるという新婦の生活がお気に召さないらしい。「まあ、女医さんだから稼ぎもいいんだろうけど、女が男より上になっちゃうような結婚はうまくいかないもんだよ」。紀香ちゃんの事を考えていた私はつい相づちを打ってしまった。
「やっぱりダメですかね?」
「ダメだな」
「でも愛されあれば乗り越えて…」
「甘いな。愛なんてなくなるもんだよ。いつまでも結婚当初のような気持ちで妻が愛してくれるとでも思っておっちゃいかんよ」
「妻が…夫を、ですか?」
「そう。妻が夫を、だ」
てっきり男性側にパートナーの女性に対する愛情が無くなるのかと思ったら、そういうお話ではないらしい。
「愛がなくなった瞬間に女に男が捨てられちゃうの。好きでもない男を養ってやろうなんて気概は女性にはないでしょ?自分のお金は全部自分のために使いたいんだよね、女の人って。男はさあ、嫁にもらっちゃったらとりあえず、嫁と子供の面倒は自分で見なくっちゃって気概も出てくるし、世間からそういうことを求められるしね。好きとか嫌いとかじゃなくて、結婚したら養うものって思わされるの。だから男は愛がさめてもとりあえず、家庭を壊すような離婚は考えずに浮気程度で気分転換するわけよ。でも、女の人ってそういうのないでしょ?自分が気に入らなくなればさっさと捨てちゃうもの」
おおおお!これは傾聴すべきご意見だ。メモメモ。私はスピーチそっちのけでこのおじさまのお話を聞く。
うほほほほん!
同じテーブルのお客からせき払いのご注意が来た。静かに、静かに!
この話、次回もリポートします!乞うご期待!
医学博士。医療崩壊の波が押し寄せる市中病院で勤務中。診療、研究、教育と戦いの日々。大学医局から呼び戻しの声があったものの、現場に留まる事を選んだがために青息吐息の不養生。愉快な仲間と必死に戦う現場での愚痴はおしゃべりすることで息抜きとする養生。医療現場の日常をちょっと変わった角度からお伝えします。