現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 医療・健康
  4. 生命保険特集
  5. 保険のカラクリ
  6. 記事

保険料は安ければいいのか?

2008年10月9日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

 「保険料が高い!」と言うと、必ずと言っていいほど「安ければいいのか?」という声が上がります。お客様からではありません。保険業界に勤める知人からの反論です。そんな時、私が感じるのは「保険料が高い会社ほどサービスが充実している具体例があるだろうか?」ということです。

 たとえば、外で飲むコーヒーのような例です。街なかのチェーン店では、1杯300円程度で飲めるコーヒーが、シティホテルのティールームでは1000円だったりしますが、「空間」が全く違うので「価格の差」も納得できます。テーブル、椅子、カップ、照明など、お客様の「居心地」のために「コスト」がかかっていることが、よくわかるのです。

 では、保険の場合はどうでしょうか?

 単純比較できる商品として、35歳の男性が、10年間、万が一の場合に備えて死亡時3000万円の「定期保険」に加入する場合の保険料を見てみます。ある大手保険会社では、「パッケージ商品」の「特約」扱いですが、「特約保険料」は毎月約8千円です。一方、インターネットを利用して、営業担当者を抱えない会社で加入すると、5〜6千円です。

 この事例で、「価格の差」に見合う「価値」を見出すとしたら、「対面販売のメリット」になるはずです。人件費の分、保険料が高いとしても、担当者に「コンサルティング料」を払っていると思えば安いものだ、という考え方です。確かに、金融商品全般から税務などにも及ぶ幅広い知識と見識を持つ担当者に出会えたならば、その人に「いつでも相談できる」メリットは、大きいかもしれません。

 しかし、現実には、保険料が高い会社で契約したからといって、優れた担当者がつく保証はどこにもありません。「コンサルティング」と呼ぶにふさわしい、質の高いサービスは、一部の優秀な担当者の個人的な「自覚」や「プライド」に支えられていて、会社の「システム」にはなっていないからです。

 私は、「保険なんて、とにかく安ければいいのだ」とは考えていません。良質なサービスを提供する人たちは、金銭的にも報われなければいけません。したがって、必要な「コスト」にそれなりの「収益」が上乗せされた「価格の維持」は、お客様を守るためにも不可欠であるはずです。

 ただ、そんな前提を踏まえた上で「保険料に差がつく理由」は、誰もがうなずけるものであって欲しいと思います。保険料が割高になる要因として、「定着しない人材のための経費」が、真っ先に浮かぶようでは情けないと感じます。

 高コストにつながる、伝統的な販売手法からの急転換が難しい会社には、「埋め合わせ」が求められます。スポンサーになっているスポーツイベントへの優待サービスなどは喜ばれそうです。また、会社の保養施設や研修施設を、契約者の方々に格安で開放することも難しくないはずです。関係者限定にしておくにはもったいない施設も少なくないと思われます。保険が役に立つ状況は限られていますが、日常生活の中で享受できる様々な特典は、「目に見える付加価値」「楽しめる付加価値」として歓迎されるのではないでしょうか。

筆者プロフィール

後田亨(うしろだ・とおる)

1959年、長崎県生まれ。長崎大学経済学部卒業後、アパレル・メーカー勤務を経て、日本生命に転職。 10年間、歩合制の営業職員として働く。2005年に独立し、(株)メディカル保険サービス取締役に。 07年に刊行した「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)で、業界を知る立場から生命保険業界が 抱える問題点をあげて、評判に。近著は「“おすすめ”生命保険には入るな!」(ダイヤモンド社)。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

総合医療月刊誌「メディカル朝日」