 | | 相談者にたばこの害を説明する原田さん(左)=神奈川県鎌倉市の鎌倉保健福祉事務所で |
■医師、体験談交え手助け 「愛のキャンペーン」ルポ
「高校1年の時から親に反抗しようと吸い始めて、いつの間にかやめられなくなりました」
「禁煙を勧められると、『害なんか百も承知で吸っている』と怒ってました」
原田久医師の言葉に、禁煙を相談しにきた男性は、「うん、うん」とうなずいていた。
3月中旬、神奈川県鎌倉市の鎌倉保健福祉事務所。「愛の禁煙キャンペーン」と名付けた禁煙支援を実施している。
禁煙外来を設ける医療機関が全国に増えつつあるなか、地域の行政組織でも禁煙支援ができるモデルとして全国から注目を集めている。
原田さん自身も3年前まで吸っていた。禁煙の目標を立てては失敗を重ねた。説教調ではなく淡々と、ときにつっかえながら体験談を話す。喫煙者もいつの間にか引き込まれている。
「愛の禁煙キャンペーン」は毎週火曜日の午後1時半から。禁煙を希望する人が、事務所を訪れると、医師に診察してもらったうえで、ニコチンパッチが3枚もらえる。
継続して処方してくれる身近な病院や医院の紹介や、インターネットで禁煙の手助けをする仕組みも教えてくれる。
予約も要らず、ふらっと立ち寄れておまけに無料。
「禁煙は愛なんです」
原田さんは、ちょっと気恥ずかしい言葉を使う。
「禁煙することは喫煙者の体を心配する周りの人への愛情表現なんです」
そして、喫煙者を見捨てず、愛情を持って禁煙を手助けしたい、という意味も込めているそうだ。
禁煙支援は、原田さんを含め医師2人、保健師、看護師、事務担当の職員の計5人が担当している。
事務所2階の待合室の片隅に机を並べて、説明用のパソコンを置く。
その日、最初に訪れたのは会社勤めを退職して間がないという、逗子市の男性(61)と妻(59)。喫煙歴40年の夫の体を心配した妻が新聞のお知らせ欄をみて引っぱってきたという。
原田さんがパソコンを使って、海外のテレビ番組や様々な統計データなどを待合室の壁に映し、禁煙のメリットを説明。医師が診断、保健師らが禁煙についてのカウンセリングをする。通して1時間余り。
「けっこう大変ですけど大丈夫、やめられますよ」と励ました原田さんに、男性は「きっかけをつくってもらえてよかった」。
この日はほかに60代の夫婦1組、30代の男性1人が相談に訪れた。
■「苦しさ我慢せず」達成
キャンペーンを始めた昨年9月からの半年で禁煙を手助けしたのは355人。「卒業生」に話を聞いた。
鎌倉市内の高校教師の女性(49)は、昨年9月に原田さんのもとを訪れ、禁煙に成功した。喫煙歴は30年近かった。
授業。「たばこは百害あって一利なし」という説明に、「じゃ、なぜ先生は吸うの」と生徒。「わかっちゃいるけど依存症でやめられないの」と答えてはいたものの気にはなっていた。
海外旅行で、海外の厳しいたばこ規制を見たこともあって禁煙に踏み切った。
「科学的な支援のおかげで、苦しさをがまんせずにやめられました」
今年1月に訪れた鎌倉市のアルバイトの女性(28)も、2カ月余り、禁煙が続いている。
大学生になって一人暮らしを始めた18歳の時、飲み会で友だちに誘われて吸い始めた。
1日1箱。毛穴の汚れなど、美容に悪いことがずっと気がかりだったがやめられなかった。
そして結婚。子どもをつくることを考え、禁煙に踏み切った。
「夫の応援に支えられました」
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