メディカル朝日 2011年10月号より
| 男性50歳以上、女性60歳以上の2人に1人が高血圧といわれ、4,000万人と推定されている。生活習慣病の中では代表的な疾患で、減塩などの食事療法や運動療法により血圧のコントロールが期待される。しかし患者のモチベーション不足により、これら生活習慣の改善が上手くいかないケースが多く、降圧薬による薬物治療は欠かせない。そこで、高血圧の改善と治療法について、日本高血圧学会の専門医である土橋卓也先生にお話を伺った。 |
土橋卓也先生国立病院機構九州医療センター 高血圧内科医長
九州大学医学部 臨床教授
■ 高血圧治療には減塩が第一 ■
現在、肥満、糖尿病、高脂血症などを伴うメタボリックシンドローム型の高血圧が増加している。その7割が食塩感受性高血圧で、脳卒中や心筋梗塞などの危険因子を併せ持った人が多く、統合的・複合的な生活習慣病の管理が求められている。特に高血圧は、心血管系疾患最大のリスク要因であり、血圧管理が非常に重要といえる。
高血圧の生活習慣の改善として、日本高血圧学会のガイドラインに6項目挙げられているが、中でも食塩制限1日6g未満が最も大切である。
しかし、画一的な指導では成功は難しい。食事の量や飲酒など、何が原因なのかを導き出し、患者一人ひとりのライフスタイルに応じた指導を行っていく必要がある。
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■ モチベーションアップが減塩成功のカギ ■
減塩が成功しにくいのは血圧との関係性にある。例えば、カロリーは体重を量れば増減が明らかだが、血圧は測定ごとに数値が変動しやすいため、減塩の実感がわきにくく、モチベーションを保つのが難しい。
食塩摂取量の評価には、栄養士による聞き取り調査で摂取量を評価する方法もあるが、簡便で確実な方法は、尿中の食塩排泄量を測定することである。
これまで私たちが評価してきた24時間尿中食塩排泄量によると、減塩を意識しないグループは平均で10.6±4.0g/日であったのに対し、減塩を意識するグループでも平均で9.4±3.8g/日と、1g程度の差しかなく、減塩の意識が実際の食塩摂取量の低下には結びついていないことが示された(図)。
最近、医師と患者が診断と治療について合意に達するまで話し合う、コンコーダンスを重視した患者参加型の診療が行われていて、患者の減塩に対する意識が成否を分けるカギといえよう。
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■ 合剤がトレンドの高血圧治療薬 ■
現在、降圧薬はカルシウム拮抗薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の2剤が主流である。両者とも降圧効果・忍容性が高く、非常に有効であるが、ガイドラインの目標値が引き下げられたため、目標値に到達しにくくなっている。
そこで、以前は降圧薬の主流で有効性が高いといわれた利尿薬が、第3の薬として注目を集めている。現在はARBとの併用により、安全かつ有効な降圧が得られるようになっている。
また、合剤が出たことで単剤のまま降圧の増強を図ることができ、飲み忘れも無く、患者への説明も容易で切り替えやすい、種類も多いため使いやすくなった。ただ早朝高血圧を抑えるためには、降圧剤を就寝前に服用することも有用であり、この場合、合剤の使用にこだわらない柔軟な対応が必要である。
現在、高血圧の薬はARBを基本とした利尿薬合剤とカルシウム拮抗薬合剤の2種をどのように使うかが議論になっている。目標値到達までの組み合わせの戦略が1つのテーマである。