| 体と塩を考えるシンポジウム |
| 〜 高血圧予防のヒントは塩分だった! 〜 |
2011年10月16日付 朝日新聞東京本社朝刊から
| 「体と塩を考えるシンポジウム〜高血圧予防のヒントは塩分だった!」(朝日新聞社主催)が2日、東京・築地の浜離宮朝日小ホールで開かれた。医師や料理研究家らを講師に招き、高血圧の予防法やおいしい減塩メニューのコツなどを話し合った。(司会は薬剤師でフリーアナウンサーの小林美幸さん) |
| ◆パネリスト |
| 土橋卓也(つちはし・たくや)さん |
| 国立病院機構九州医療センター内科医長(高血圧内科)。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(2009年)の作成委員。 |
| 浜内千波(はまうち・ちなみ)さん |
| 料理研究家。ファミリークッキングスクール代表取締役。執筆のほか、食品メーカーなどの商品開発にも協力。 |
| 山崎理(やまざき・おさむ)さん |
| 新潟県健康対策課長。自治医大医学部医学科卒業後、同県へ。地域保健医療計画や新型インフルエンザ対策などを担当。 |
| 高戸良之(たかと・よしゆき)さん |
| シダックス総合研究所長。筑波大大学院で健康教育学を学び、2007年度から、日本食育学会評議員。 |
| ◆司会 |
| 小林美幸(こばやし・みゆき)さん |
| 薬剤師、フリーアナウンサー |
| 守りたい生活習慣 | |
|---|---|
| 日本高血圧学会の 「高血圧治療ガイドライン」(2009年)から | |
| (1) | 食塩の制限(1日6グラム未満) |
| (2) | 野菜・果物を積極的にとる |
| (3) | 適正体重の維持 |
| (4) | 定期的に運動する(毎日30分以上を目標) |
| (5) | アルコールを控える |
| (6) | 禁煙 |
小林 減塩を進めるには患者から医師に情報を伝えることが大切ですね。
土橋 どんな食品から食塩をとっているかは人それぞれ。どこで何時ごろ食べているか、生活パターンも重要な情報です。いつもお酒を飲んで外で食べているような人には、食塩を減らせと言う前に外で酒を飲む機会を減らしましょうという言い方もできます。
小林 食事の食べ方の工夫はありますか。
浜内 しょうゆなど、食卓には調味料を置かないことが大切ですね。代わりに酢やレモン、スダチ、カボスなどを置いていただきたいと思います。
小林 外食の提供で努力されている点は。
高戸 お客様の好みは、どうしても味が濃いものになりがちです。塩を使うのではなく、香味野菜などで、アクセントをつけるようにしています。
小林 新潟県は減塩を提案していますね。
山崎 自治体が旗をふるという昔ながらのやり方だけでは、減塩は難しいです。地域にあるいろいろな取り組みを後ろから支えて、県民運動にしたいと考えています。
土橋 高血圧には「半分の法則」といわれるものがあります。高血圧なのに自分は高血圧と思っていない人が半分、知っていても病院にかかっていない人が半分、かかっていてもきちんと管理されていない人が半分。受診していない患者さんがたくさんいるからこそ、自治体や地域の働きかけも大切になります。
小林 塩分が体外に出るよう、シダックスのメニューも工夫していますか。
高戸 減塩にとどまらず、生活習慣病対策としても野菜をしっかりとれるよう、メニューに反映させるようにしています。
小林 「減塩ルネサンス」では塩排出と減塩の目標が設定されています。
山崎 「野菜一皿の増加」「果物1日1個程度の摂取」です。普段の摂取量は人によって違うので、一皿とか1日1個程度がいいと考えています。
小林 とった塩分はどうしたら体外に出やすくなりますか。
土橋 カリウムを含む食べ物をとると、「塩抜き」になると考えられています。また、運動すると腎臓から出ている塩を排出するホルモンが活性化されることもわかっていますので、毎日30分の運動も続けて欲しいと思います。
小林 それでは、会場からの質問に答えていただきましょう。塩1日6グラムを、簡単に把握できる方法はありますか。
浜内 計量スプーンの小さじ1杯が約6グラム、しょうゆに換算すると、だいたい大さじ2杯。3本の指で塩を一つまみすると、0.3グラム程度になります。
小林 ゆで塩で注意することはありますか。
浜内 塩をゼロにすると、かえって塩を多く使ってしまう。ブロッコリーでも、ホウレンソウでも、熱湯に対し1%の塩を入れてゆでてみてください。何もつけなくても、酢やレモンをかけるだけで、とてもおいしくなると思います。
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| パネルディスカッションで減塩生活を話し合った=郭允撮影 |
土橋卓也さん
日本人は4千万人が高血圧と言われており、50歳以上の男性の半分以上、60歳以上の女性の半分以上があてはまります。高血圧は放置すると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)につながる怖い病気です。
血圧には上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)があります。この上と下の差を「脈圧」と言います。よく患者さんからどの血圧値が大事か、聞かれますが、すべてに気をつけて治療したいと考えています。特に脈圧が大きければ、動脈硬化がある程度進んでいることを意味しますので注意が必要です。
高血圧は高齢者の方でも140ミリ水銀柱/90ミリが基準になります。これを超えると脳卒中、心筋梗塞が増えるとわかっています。
血圧は家庭で測ることが大切です。家庭血圧による高血圧の基準は、135ミリ/85ミリとなります。家庭では120ミリ/70ミリの人が病院で測ると、150ミリ/90ミリに上がることがあります。これを「白衣高血圧」といいます。逆に家では150ミリ/90ミリだったのに、病院では120ミリ/70ミリになる人もいます。これが「仮面高血圧」で、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いので注意が必要です。
私たちが患者さんを調べたところ、白衣高血圧が13%、仮面高血圧が27%いることがわかりました。だからこそ家庭で血圧を測り、病院での血圧とともに良好に管理されていることを確認する必要があります。
高血圧は、遺伝的な要因に、食塩の取りすぎ、肥満、運動不足、お酒、たばこ、ストレスなどの要因が加わって発症すると考えられています。大切なのはやはり、減塩。1日6グラム未満が目標です。それから運動。体重は減らなくても、ナトリウムが腎臓から出ていく作用が期待できます。
近年は、医療の発達で、脳卒中や心筋梗塞を起こしても、死なずにすむケースが増えています。ただ、寝たきりにならずに、元気に復帰できるかは、それまできちんと高血圧の治療をしていたかどうかに関係してきます。
私は高血圧とわかった患者さんには「よかったですね」と言います。高血圧に気づき生活習慣を見直して上手につき合えば、健康長寿が期待できるからです。
浜内千波さん
食べ物が豊かになり、塩を取り過ぎて高血圧になる人が増えています。ただ、「高血圧」との印鑑を押されて初めて、減塩料理を考える人が多いと思います。
その人その人の家庭の味付けがありますが、我が家は塩分が多いのか、少ないのか、一度、自分の家の味を確認してみてください。目安は、少し濃いめになりますが、塩分が1%と考えてください。
まず、計量スプーンなどで、1%の塩分で作ってみてください。「薄いな」という人は「我が家はちょっと濃い味だな」と。
例えば、肉じゃがを作る時も、1%の塩分を目安にしましょう。肉の重さはパックに表示されています。タマネギ、ジャガイモ、ニンジンなど重さも量って、材料が全部で1千グラムなら10グラムの塩で1%になります。
塩は小さじ1杯が6グラムなので1杯半が9グラム。しょうゆは6倍で塩と同じ塩分に。塩10グラムなら、しょうゆは60グラム。砂糖を使うとしょうゆも入れたくなるので砂糖の量も減らすように。
ただ、塩分を急に半分まで減らすと「減塩=まずい」となりがちです。「薄味の食事っていいね」と、家族で話しながら食べるのが大事なように感じます。
塩を体外に排出する食材、カリウムを多く含む食材も食べましょう。イモ類にも多いので、これからの季節、おすすめです。ホウレンソウなどの野菜や果物、ナッツ類も豊富です。グラムあたりで多いのはパセリで、我が家では毎朝ジュースに入れるよう心掛けています。
1日6グラムの食塩を3食で分けると2グラムずつ。これでは大変なので、私は2で割って、朝食は塩分ゼロの野菜ジュースにしています。
甘みが足りなければバナナやリンゴなどの果物を加え、豆乳か低脂肪の牛乳を入れて、1人当たり3カップ(600cc)ほどを飲んでいます。野菜や果物は、ミキサーにかけやすい大きさにカットして冷凍しておくと便利です。
山崎理さん
新潟県では昔から塩分の摂取量が多く、脳卒中や胃がんが多いと報告されています。そこで、県が音頭をとって、「にいがた減塩ルネサンス」という取り組みを続けています。
塩分の摂取量は全国平均との差は小さくなりましたが、どうしても1日10グラムの壁が破れません。その理由として、考えたのが外食の増加です。いまの減塩運動は、外食産業と一緒に進める必要があるようです。
「減塩料理コンクール」などの企画も、「我慢」「控える」といったマイナスイメージより「このくらいなら食べていい」というポジティブな発想で、新メニューの開発など地元振興にもつなげたいと考えています。
高戸良之さん
カラオケを約300店、社員食堂や病院、学校など全国約2800施設で食事を提供しています。
6月、約50施設で全国統一の減塩メニューフェアを開きました。「減塩」というと、「病院食」などと否定的に受け止める人が多いので、今年はおいしさを第一に、香味野菜などで1食全体で減塩に取り組むメニューを紹介しました。
例えば、竜田揚げでは、大葉やショウガなどの香味野菜をのせてソース代わりに。アクセントをつけることで通常のメニューより34%塩分をカットしました。85%以上の人が「良かった」と回答、好評でした。