(回答者:杏林大学医学部第一内科教授・小林宏行)
仕事や友人関係で不安を感じると息苦しさを感じ、呼吸が荒くなって、しばしば手足のしびれやめまいなどをおこされることから、「過換気症候群」がもっとも考えられます。
この過換気症候群とは、精神的不安や緊張、興奮などの心理的背景によって発作的に「息が苦しい」「空気が飲み込めない」「胸が苦しい」などの空気飢餓感を訴える病気です。しかしながら、実際には呼吸数と深さが増加しており、より不安が増大して呼吸困難感が増悪すると、四肢のしびれ感、めまい、さらにひどくなると意識消失発作(失神)をきたします。
私たちは通常1分間あたり450ml程度の空気を12〜14回呼吸しています。専門用語でこれを換気といいますが、これにより、動脈血中の酸素と二酸化炭素量を一定に保っています。換気が多くなると酸素を多く含んだ新鮮な空気をたくさんとり込むほかに、血液中の二酸化炭素分圧は逆に体外へ放出され低下します。
すなわち、過換気症候群では心理的な不安による呼吸困難感により換気の亢進がおこり、その結果、動脈血の酸素は通常以上に増加し、一方、動脈血中の二酸化炭素は通常以上に低下することになります。
動脈血中の二酸化炭素の低下は、血液のアルカリ化を招き、四肢や顔面のしびれ感、筋肉の硬直やテタニーと呼ばれる細かい痙攣などが発生します。
さらにすすむと血管が収縮し、一時的な脳血流の欠乏のためにめまいや失神などの悪循環に陥る場合もあります。過換気症候群の発作時の治療として、呼吸困難という自覚症状の改善を目的に空気を含んだ紙袋を鼻と口にあてて呼吸をしていただきます。
この紙袋の中の空気には吐きだした空気の中の二酸化炭素が蓄積しますから、結果的に血液中の炭酸ガスはもとにもどることになり、しびれ感などは改善されます。その程度では決して酸素欠乏をおこすことはありませんので、不安を抱かないことが重要です。
このような病気は一般外来での患者さんにはごく少数見られますが、不安神経症などを有する患者さんでは、その頻度は40%以上に上昇するといわれています。つまり、過換気症候群の発作の誘因には心理的な不安が強く影響します。
したがって、非発作時にはこの症候群の誘因となる不安に対する心理的なコントロールが重要となります。
相談内容を拝見しますと、発作がおこることが心配で、その不安が誘因となって過換気の発作が出現されているようです。
過換気症候群は決して治らない病気でもなく、また死にいたる病気でもありませんから、心療内科や呼吸器内科、精神科などに相談され、発作の誘因となっている不安を除去し自信をもって生活することをおすすめします。
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