(回答者:日本大学医学部歯科口腔外科助教授・植木 輝一)
ご質問のように他人の口臭は、指摘することもできず、いやな思いをされている方が多いと思います。口腔は鼻腔とつながっており、においは鼻腔粘膜にある臭神経が感知しますが、人間の臭神経はすぐ麻痺してしまい、自分自身でにおいを感じなくなります。例をあげれば、トイレに入ったとき、くさいと感じますが、すぐにわからなくなります。
口臭の原因には全身的原因と局所的原因とがあり、ほとんどが局所的原因、すなわち口腔内に問題があります。歯垢による歯周病や齲蝕(虫歯)、舌苔、唾液の不足、義歯のカンジダ菌、口呼吸などで口臭が発生します。
口臭の原因物質は、口腔内の粘膜剥離上皮細胞、唾液中たんぱく、食渣(食べかす)、白血球、歯垢などに含まれる含硫アミノ酸が口腔内常在菌によって代謝され、揮発性硫化物(メチルメルカプタン、硫化水素、アンモニアなど)となり、口臭を発生させるのです。
歯垢は、歯や歯頸部(歯と歯肉の境目)、義歯、舌の表面に付着します。口臭のいちばんの原因は歯周病で、歯垢中の細菌によって引きおこされる慢性炎症です。
歯垢を除去するには、歯みがきがもっとも優れた方法です。次に含嗽(口をすすぐこと)です。また、歯と歯の間の歯垢は、歯間ブラシやフロス(糸ようじ)の使用が効果的です。
舌苔は舌表面に沈着した細菌、剥離上皮、白血球などにより形成され、不衛生な口腔や口腔乾燥により発症します。舌ブラシやかための歯ブラシでこすりとったり、薬液綿球でふきとることができます。また、舌苔がある場合、カンジダ菌が繁殖しやすくなりますから、医師や歯科医師に相談してください。
義歯を装着している方は、義歯の裏側やバネの部分に歯垢が付着しやすいため、清掃が必要です。また義歯床内に細菌(カンジダ菌)が侵入するのを防ぐため、就寝時には必ず義歯を外して清掃し、義歯洗浄剤に浸けておくことが必須です。
そのほか、口臭を引きおこす原因として特定の薬剤があげられます。具体的には、安定剤や抗うつ剤などをさしますが、これらを服用している方は、副作用として唾液の分泌が減少し、自浄作用が低下するため口臭が生じます。
口臭を調べる器械はいろいろありますが、原因物質(揮発性物質)の数種類を測定する器械がほとんどです。しかも高価です。専門的にはMSハリメーター、プレストロン、オーラルクロマ、アテインなどがあります。口臭外来を開設している大学では設置しています。一般的には、簡便な口臭測定器などが販売されております。
このように口腔清掃を実践すれば、口臭はほとんど消失しますが、生活習慣として、繊維性の食物をとり、よく噛むこと、また鼻で呼吸すること、などをさらに実践すれば、ほとんど改善します。口臭予防には、ヨウ素製剤、塩化ベンゼトニウム、アズレン製剤などの含嗽剤の使用をおすすめします。
以上のようなことを行っても口臭が改善されないようでしたら、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎などの耳鼻咽喉科疾患、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患、消化器疾患など全身的原因を考慮しましょう。典型的な例をあげると、糖尿病では甘酸っぱい果実臭(アセトン臭)、肝疾患では腐った卵のにおい(アミン臭)、腎疾患ではアンモニア臭がしますので、その際は医師に相談してください。
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