(回答者:順天堂大学医学部 消化器内科教授・佐藤 信紘)
自己免疫性肝炎は、自分自身の免疫機構が自らの組織を外敵と誤認し攻撃してしまう、いわゆる自己免疫状態によっておこる疾患の一種で、肝臓の細胞が標的になったために肝臓に炎症がおこります。なぜ自己免疫状態になるのかはまだよくわかっていませんが、ウイルス感染などがきっかけになる可能性が考えられています。
中年の女性に好発し、ほとんど無症状で進行するので、検診などで指摘されないかぎり、病態が進行したところで発見されることが多い病気です。
なかには急激に発症・進行し、命にかかわるような病態で発見されるケースもあります。診断は血液生化学検査や肝生検などの所見をあわせて総合的に行います。
【適量のステロイド剤で長期的に治療】
治療法はプレドニン をはじめとしたステロイド剤による治療が基本です。30〜50mg程度のステロイド剤をもちいることで、多くの場合は肝炎の沈静化を認めます。
しかし、これは治癒というよりは、落ち着かせる状態であり、ステロイド剤投与をやめるには困難なケースも多いのです。ですから肝炎を再燃させないように検査値を確認しながら、ゆっくり慎重に、ステロイド剤を減量していきます。
しかしそれでも、なんらかのきっかけで再燃する症例も多くみられます。
今回の相談もステロイド治療中に再燃した例だと思われます。
その場合は再度ステロイド剤を増量し、肝炎の沈静化に努めるほかはありません。中途半端な量のステロイド剤の投与を長期間にわたって続けると、やっかいなステロイド剤の副作用が表在化してきますから、必要な量をもちいて速やかに肝炎を沈静化させ、また減量させることがとても重要です。
中等量以上のステロイド剤を使用するには入院が必須ですので、担当医も入院をすすめられたのでしょう。
【まずは肝炎の沈静化 できるだけ早期入院を】
このまま肝炎を沈静化させないでいると肝臓の線維化がおこりますが、これはほとんど無症状で進行します。それがさらに進展すると、肝臓は全体にかたくなって萎縮し、肝硬変と呼ばれる状態になり、黄疸や腹水の貯留、出血した場合に止まりにくいなどの症状がでるようになります。意識が混濁する場合もあり、最終的には肝臓がんになったり、肝不全で不幸な転機をたどることもあります。
進行した肝硬変に対しては、現時点の医療における根治療法は、肝移植のほかありません。
肝硬変まで進行する前に、劇症肝炎に進展する場合もあります。
この場合は全身倦怠感、黄疸、出血傾向、意識障害などの症状が見られ、肝不全が急速に進行します。入院し、ステロイドパルス療法や血漿交換療法といった大がかりな治療を行いますが、約3分の1の方は救命できません。劇症肝炎まで進展しなくても、肝炎が増悪するほど、より大量のステロイド剤が必要になります。そうすると、必然的により長期間の入院を要しますし、入院費用もかかることになります。
GOT、GPTがそろって500を超えているのですから、すでにかなり強い炎症があると思われます。いろいろと事情がおありだとは思いますが、自覚症状がおこってからでは手遅れになる可能性が高いので、担当の医師がすすめられているように、できるだけ早期の入院をされるようにおすすめします。
|