(回答者:大熊クリニック院長 大熊輝雄)
社会不安障害は社会恐怖とも呼ばれ、従来、わが国では対人恐怖症といわれてきました。
ご質問にあるように、他人と対面したり、複数の人の前で話をするときなどに、過度に緊張してしまい、手が震えたり、汗をかいたり、うまく話せなくなったりする状態をいいます。
こうした現象は、程度の差はありますが、誰にでも多少はあることで、神経質な人はとくにおこりやすいのです。
【緊張しやすいために症状が現れる】
対人恐怖は、わが国では以前、赤面恐怖がその代表的なものでした。人前にでると緊張して顔が赤くなることは誰にでもあることですが、敏感な人はふつうの人よりも赤くなりやすいし、同時に赤くなっては恥ずかしいという気持ちが強いので、緊張していっそう赤くなってしまうのです。
有名な精神科医であった森田正馬先生は、「赤面するのは誰にでもあることで人間の価値には関係ない、赤くなってこまると緊張するからよけいに赤くなるという悪循環がおこるのだから、赤くなってもかまわないと開き直ってありのままで行動しなさい。そして人間にとって、もっと大切ななすべきことを一生懸命にやることに徹底しなさい」といった趣旨の精神療法を始められ、現在も森田療法として行われています。この考え方は赤面恐怖だけでなく、その他の社会恐怖、社会不安障害にも当てはまるものです。
しかし「ありのままに行動しろ」といわれても、なかなかできないものです。そこで緊張をやわらげるために、最近では抗不安薬(精神安定剤)を使うのがふつうです。ご質問にあるソラナックスも代表的な抗不安薬です。最近の抗不安薬は使用を続けていて効果が弱くなること(耐性形成)は少ないので、服用を続けても心配はありません。抗不安薬の使用法は、毎食後というように時間を決めて飲む方法と、会議などがある前に頓服的に使う方法があり、また両方を併用することもできます。抗不安薬のほか、抗うつ薬も有効な場合があります。
【緊張弛緩法の一つで自律訓練法を試してみては】
くすりに依存した生活になりはしないかということですが、くすりが本当に必要で使用を続ける場合は、せまい意味では依存とはいいません。たとえば高血圧の方が降圧剤を飲み続ける場合や糖尿病の方がインスリンを続けるときなどを依存といわないのと同じです。ただ、くすりはできるだけ少量で済ませるように工夫することが大切です。
社会不安障害は、一般に年をとるにつれて軽くなるものです。若い頃は何事にも敏感なものですし、年をとって経験を積むと自信がついてきて緊張が少なくなるのです。
また人前での緊張を少なくする方法の一つに「自律訓練法」があります。これは心身の緊張をほぐして弛緩させる方法を段階的に学習(訓練)する方法です。毎日15分間くらい練習して、全部習得するのに数か月かかりますが、録音テープやビデオテープが市販されていますから、関心のある方は練習してみるのもよいでしょう。
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