(回答者:東京慈恵会医科大学青戸病院精神神経科 林田健一)
寝言は本人が自覚することなく、睡眠中に言葉を発する現象をさしますが、小声で短い寝言であれば、健常者にみられる生理的な寝言と考えられます。この場合、毎晩くり返されることはまれで自然軽快します。
しかし、怒鳴る、叫ぶ、悲痛のような激しい寝言やうめき声、あえぎがみられる場合には、治療が必要となる可能性があります。
■一晩中続くとなるとレム睡眠行動障害とは異なる疾患
激しい寝言をくり返す成人の代表的疾患に「レム睡眠行動障害」があげられます。中高年の男性に多く、夢(悪夢が多い)の内容に合わせて、激しい寝言や実際に行動してしまう症状が特徴です。たとえば、誰かと争っている夢を見た際に「ばかやろー」と怒鳴り、こぶしで壁や横に寝ている人を殴ってしまうエピソードや何者かに追われている夢を見ている際に「助けて」と叫び、枕元の時計を投げつけて壊してしまうといったエピソードが生じてしまうのです。ぶつぶつとひとり言をいっているような寝言がみられる場合もあります。エピソードの際にからだを揺すって話しかけると、容易に覚醒し、夢の内容を想起できることが多いのも特徴です。
原因はレム睡眠(夢を見ているといわれている睡眠段階)中の筋活動を抑制する機構の障害と考えられています。レム睡眠は約90分の周期でくり返し、朝方に多く出現するため、症状もこの時期に一致して出現します。しかし相談にある「ほとんど一晩中しゃべっている」様子は、レム睡眠行動障害とは異なる印象があります。その他、鑑別すべき疾患として、高齢者や全身状態が低下した際の夜間せん妄や心的外傷(トラウマ)を受けたあとに生じるPTSD、思春期頃までの睡眠中に悲鳴、叫び声で覚醒する夜驚症などがありますが、いずれも相談内容とは異なる印象です。
■睡眠時無呼吸症候群の可能性が高い
むしろ寝言以外にもいびきをかいている点から、睡眠中に気道の一部分が狭窄、もしくは閉塞する状態を何度もくり返す睡眠時無呼吸症候群(閉塞型)である可能性のほうが高いと考えられます。中高年に多く、肥満や骨格の問題、あるいは扁桃腺肥大などが無呼吸の原因となり、無呼吸をくり返すことで睡眠が妨げられ、日中の眠けや熟眠感が得られず、事故へつながるリスクや心血管系への負担から心不全、脳卒中といった命にかかわるリスクがあり、適切な治療が不可欠な疾患です。
いびき以外に呼吸再開時にあえぎやうめき声、ぶつぶつとやや聞きとりにくい寝言がみられることがあります。重症では1時間に30回以上無呼吸をくり返すため、いびきや寝言のような発声が一晩中くり返される状態を生じる可能性は考えられます。
診断には、終夜ポリグラフが必要となりますが、レム睡眠行動障害などを鑑別していくためにも、睡眠障害を専門とした医療機関の受診をおすすめします。睡眠時無呼吸症候群の治療には、鼻マスクから圧をかけた空気を送り、気道を開くシーパップという装置を主流にマウスピースを装着する方法がありますが、歯ぎしりもあるようですので後者も選択肢になるかと思います。自覚症状は乏しいようですが、奥様への負担もありますので、早期受診、精査が望まれます。
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