(回答者:日本医科大学呼吸ケアクリニック所長 木田厚瑞)
せきやたんが数か月以上にわたって続くのはすべて病気と考えてよく、重いものには肺結核や肺がんの場合があります。
また頻度が高い病気としては、鼻汁がのどに流れ込む後鼻漏、胃液が眠っている間に食道の上部まで少量が逆流する胃食道逆流症、乳幼児期に重い肺炎の後遺症などで生じた気管支拡張症、マイコプラズマやウイルス感染による気道感染が治ったあとに長くせきが続く気道過敏症、高血圧の治療薬であるACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬の副作用によるせきの場合などがありますので、区別して治療しなければなりません。
【初期症状はせきとたん】
まず病気がなんであるかを決める、つまり診断を確定することが大切です。大学生の頃からの喫煙歴がある方で、1年くらい前より少したんがからむせきが続いており、しかも冬季に増悪したという経過が問題です。ご相談の内容からすると、肺気腫あるいは慢性気管支炎の可能性が高いと思われます。
原因は長年の喫煙や職業的な粉塵暴露です。放置すれば数年のゆるやかな経過で次第に悪くなっていき、やがて息切れが強くなって日常生活に不自由を感ずるようになってきます。また重症になれば自宅での酸素療法が必要になってきます。
肺気腫、慢性気管支炎は現在ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれています。糖尿病並みに多い病気であり、全国で500〜700万人の患者数と推定されているのに、実際に治療を受けている人は20数万人程度といわれ、著しく診断率が低いことが問題になっています。中高年に多い病気ですが、初期の症状はせきとたんであり、40代から始まることが多いようです。
【診断はスパイロメトリーという肺機能検査で】
胸部のエックス線写真のほか、スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査により診断します。気管支を拡張させる吸入薬を吸って、その前後で精密な肺機能の検査をおこないます。これによって、重症度と治療薬の効果をあらかじめ推定することができ、また血液検査や心電図により、息切れが心臓の病気など、ほかの原因でおこっていないかを調べることができます。
胸部のCT(コンピュータ断層撮影)は肺胞と呼ばれる肺の細かな構造が広い範囲で壊れているかの手がかりになり、肺がんの合併をチェックすることができます。肺がんは肺気腫の合併として頻度が高いことがわかっています。
喫煙はがんだけでなく、心臓病や脳血管障害の原因となる動脈硬化を悪化させます。この病気は呼吸器の生活習慣病であり、ほかの生活習慣病との合併度が高いことが知られています。
治療は、まずリスクを除くこと、つまり禁煙を厳守しなければなりません。節煙やニコチン量の少ないタバコに変えても、症状は確実に進行していきます。厳重な禁煙を将来も守る必要があります。禁煙を達成するには禁煙外来を利用するのもよい方法です。
また治療薬では気管支を広げるような吸入薬を最初に使います。これにはβ2刺激薬と呼ばれるものと、抗コリン薬と分類されるものとがあり、両方を使うことで治療に相乗効果があります。
そのほかに生活習慣病という立場から、栄養や運動についても適切なアドバイスが必要です。呼吸器診療に力を入れている内科の受診をおすすめします。
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