(回答者:岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・眼科講師 長谷部聡)
逆さまつげには、まつげ(睫毛)だけが内側に向かって生える睫毛乱生と、まぶた(眼瞼)全体が内側に折れ込む眼瞼内反の2とおりあり、小児の逆さまつげの多くは後者です。まつげを抜去しても毛根部が残りますから、抜去後1か月前後で再発してきます。成人の睫毛乱生であれば、定期的に睫毛抜去することは容易です。しかし、処置をいやがる小児でまつげを抜去することはむずかしく、危険をともなうこともあります。
また眼瞼内反が軽症であれば、成長とともに自然に治ることも期待できるため、まつげの抜去は行わず、経過観察のみでよいでしょう。ただし刺激症状や目やになどが見られる場合には、対症療法として抗菌薬や角膜保護薬などの点眼液をもちいるのがよいでしょう。
【まぶしいなどの症状で角膜炎の可能性も】
逆さまつげにしばしば見られる症状は、眼の異物感や痛みです。角膜は神経が敏感な部分ですから、まつげの先端が接触するだけで症状がおこります。さらに接触が持続すると角膜炎がおこります。角膜の表面に細かい傷ができると、角膜の表面で光線が乱反射するようになるため、視力が低下します。
まぶしい感じ(羞明感)を訴える場合もあります。涙があふれたり、白目が充血したりするようなら、角膜炎は重症と思われます。早めに眼科医の診察を受けるべきでしょう。放置すると、角膜にできた傷から細菌が入り、角膜潰瘍をおこす場合があります。角膜潰瘍は、しばしば治癒後も角膜混濁を残すため、永続する視力障害の原因となります。
眼瞼内反に対する手術は、眼瞼の皮膚の一部をとり除いたり、埋没した糸で眼瞼を牽引したりして、眼瞼をまつげとともに正常な位置にもどします。手術自体は安全かつ効果的で、目立つ傷は残りません。
ただし、小児では全身麻酔下で手術が行われるため、通常、短期間の入院が必要になります。ほかに病気がなければ全身麻酔は安全ですが、リスクがないわけではありません。逆さまつげや角膜障害の程度などから総合的に判断して、保存的に経過を見るか、それとも手術に踏み切るか、担当医とよく相談してみてください。
【眼鏡で視力矯正をしても効果が見られない場合も】
ご相談の症例の視力は0.5ということですが、視力低下の原因は、逆さまつげによるものでしょうか、それとも近視や乱視などの屈折異常によるものでしょうか? もし眼鏡レンズで矯正しても良好な視力が得られないなら、前者の可能性があります。逆に、良好な視力が得られるのであれば、後者が考えられます。
小児期に見られる近視の大部分は、眼軸長(角膜表面から網膜までの距離)の過伸展により、相対的に眼の焦点が網膜前方にずれることによっておこる、いわゆる軸性近視です。このため、治療による回復は困難です。将来、遠くを見るときに視力障害が問題となれば、眼鏡を使用するのがよいでしょう。頻度はまれですが、調節緊張により一過性に近視状態になる場合(偽近視)も考えられます。この場合は、調節麻痺薬の点眼により視力が改善することがあります。
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