(回答者:獨協医科大学第一外科主任教授 砂川正勝)
便秘は生命に直接かかわる病気ではありませんが、その苦しみや不快感は本人にとって深刻な問題です。相談者は便秘の治療として腸洗浄に期待されているようですが、腸洗浄を習慣的に行うことは大腸本来の排便機能を損ない、かえって腸洗浄に依存的になるので好ましくありません。
【生活様式、身体状況など多角度からチェック】
さて、相談者は5年来慢性の便秘に悩まされているわけですが、まずその原因を知ることが第一でしょう。
原因は大きく分けて、
(1)機能的便秘(腸のはたらきの異常)
(2)器質的便秘(腸や他臓器の病変による異常)
(3)薬物性便秘
の3つが考えられます。
(1)は生活習慣(睡眠時間、運動量、ストレスの程度など)や、食事に関する要因(時間、量、繊維性食物、水分など)、(2)は大腸・肛門疾患(がん、潰瘍、炎症、痔など)、婦人科疾患あるいは、パーキンソン病や糖尿病、甲状腺機能低下症といった全身性疾患にともなうもの、(3)は鎮痛薬、麻薬、抗うつ薬などの服用によっておこるものです。
便秘の治療で大切なことは、まず自分自身で便秘の原因をさまざまな角度からチェックすることです。そのチェックポイントは次のとおりです。
(1)生活様式(環境、睡眠、ストレス、食事、間食、薬物など)
(2)身体状況(全身、腹部、骨盤内臓器、大腸、肛門など)
(3)疾患のスクリーニング検査(血液、便潜血、大腸内視鏡、エックス線、CT〈コンピュータ断層撮影〉、超音波など)
(2)、(3)については専門医の診察が必要です。とくに最近増加の著しい大腸がんが便秘のおもな原因の1つなので、健康診断も含めて(3)のチェックは必要です。また、婦人科疾患と関連することがまれにありますので、一度チェックすべきです。
【ライフスタイルの見直しから始める】
このように順次チェックして重大な疾患と関連のない慢性機能性便秘と判明した場合は、安易に下剤(腸洗浄は論外)に頼らず、自分の努力で便秘を治すことが大切です。
相談者にかぎらず、速効性の薬物治療に期待する人は多いのですが、これは誤りです。今までのライフスタイルを変えることから始めてください。
第一は朝食後の規則的排便訓練です。
朝は誰しも忙しいものですが、時間的余裕をもって排便リズムを得るために10分間(それ以上は不必要)はトイレに座っていることが大切です。
第二は食事内容の調整です。一定量の朝食を必ずとることで、胃の充満によって腸の運動を司る副交感神経が活性化し、腸の蠕動運動が誘発され便意がおこるので、これは重要なことです。
食物繊維をとることも必要ですが、とりすぎも便秘の原因になります。
第三は1日のなかでの適度な運動(早朝の軽い運動を推奨)と腹式呼吸を身につけることです。
また、睡眠時間を十分にとることによって腸の運動が円滑になります。
以上のことに注意し、必要であれば習慣性が少なく長期使用の可能な緩下剤をもちいてみてください。
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