(回答者:和歌山県立医科大学医学部産科婦人科教授 梅咲直彦)
45歳での妊娠のこと、ご心配のことと推察いたします。喜び半分、心配半分のご心境ではないでしょうか。
しかし最近では高齢妊娠・分娩はめずらしくはありませんし、その多くの女性が元気な赤ちゃんに恵まれておられます。どのようなことに注意しなければならないかよく医師の指導を受けられ、それを守り、また慎重な妊娠管理を受けられれば心配するほどのことはありません。
【流産などの発生頻度は高まる】
最初に高齢妊娠・分娩においておこり得る問題点を説明します。
まず加齢にともなう卵子の老化問題があります。卵子が老化したため受精後もうまく分裂して育っていかないことも多く、このため流産になったり、ダウン症、18トリソミー、13トリソミーなどの染色体異常の発生頻度が高くなります。これら染色体異常児は、33歳時の妊娠に比べると45歳では発症頻度が17倍に増えると報告されています。この数字は高いように感じますが、そもそも染色体異常はまれなので、絶対数からいうとそれほど多くはありません。
現在、これを防ぐ確実な方法はありませんが、早期に診断を希望される場合には絨毛検査や羊水検査を受けておかれるのがよいでしょう。
次に合併症です。妊娠高血圧症候群(以前の病名は妊娠中毒症)や妊婦糖尿病が増加します。これらが疑われる場合には、頻回の検診を受け、早期発見に努めるとともに食事・栄養指導を受けることが必要になります。
また体重の増加についても注意しなければなりません。妊娠後期には前置胎盤や胎盤早期剥離もおこりやすいので、出血や急な激しい腹痛のときには医師によく相談してください。
【異常がなければ経腟分娩が望ましい】
高齢初産婦では、分娩のすすみ方が遅いことが多いこともよく知られています。
頸管熟化不全や軟産道強靭症がその原因の1つと考えられます。
これは産道をとり巻く組織の弾力性の低下によるものと考えられています。また骨の硬化のため骨盤の狭小化の可能性も高くなります。
異常がなければ経腟分娩が望ましいのですが、異常の程度に応じて帝王切開分娩を早めに選択するのも賢い方法と考えます。
なお帝王切開後には血栓症発症のリスクが高齢出産では高くなるので、その予防にも注意を払いましょう。具体的には弾性ストッキングの着用、また血栓を予防するヘパリンというくすりの点滴注射などです。
生理的な面では、20歳代の妊娠に比較して劣る面もありますが、逆に高齢妊婦の女性は人生の経験を十分に積んでおられ、多くの困難にも耐えられる能力をもたれている方が多いのです。
これは妊娠、分娩というこれまでにない新たな経験に立ち向かうときに大きな力となります。
また、担当の医師の指導もよく理解できることも強みです。
さらに待ちに待った生命の誕生とのことで、その喜びが大きいため、少々の困難にも耐えることもできます。
結果的に育児にもそれらの人生の経験が生きてきます。
昔から日本には「案ずるより産むが易し」とのいい伝えがあります。安心して、妊娠、出産を楽しんでください。
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