(回答者:学校法人獨協学園理事長獨協医科大学学長 寺野彰)
【手術から約1年経ち、腫瘍マーカーが上昇。再発か】
昨年8月に大腸がんの手術を受けたとのことですが、がんがどの段階のものであったかが問題です。早期がんか、進行がんか、またはリンパ節や肝臓などに転移がなかったかなどは不明ですが、おそらく開腹手術であったと思われますので、一応進行がんで、転移はなかったものとしてお答えいたします。
【がんの進行状態、治療後の目安となるCEA】
最近の検査で、腫瘍マーカーの数値が上昇したとのことですが、大腸がんの診断にもちいられるおもな腫瘍マーカーは、CEA(がん胎児性抗原)というマーカーです。一般に腫瘍マーカーとは、「がん細胞が産生する物質で、血液などに検出され、がんの存在の目印であり、がんの大きさや進行度の指標となる、がんの診断、治療後の経過を知るのに役立つ検査法」といわれています。似たような腫瘍マーカーでは、肝臓がんにおけるAFP(α−フェトプロテイン)が有名です。この2つが代表的な腫瘍マーカーといえますが、ほかにも多くのマーカーが発見されてきています。腫瘍マーカーには、大腸や肝臓、肺など臓器によって特徴があるのです。
CEAは大腸がんの腫瘍マーカーとして、診断、治療、経過観察に広くもちいられています。しかしCEAは、大腸がんのみでなく、食道がん、胃がん、すい臓がん、肺がん、乳がん、甲状腺がんなどでも上昇し、実際、これらのがんの診断にもちいられています。
さらに、CEAは正常組織にも少量ながら含まれているため、喫煙者などでもある程度上昇することが知られています。潰瘍性大腸炎でも上昇することがありますし、腎臓や肝臓などの障害、糖尿病などでも上昇することがあります。
このようにCEAは、大腸がんで上昇することが多いのですが、ほかの病気で上昇することもあり、正常者でも異常値を示すことがあります。また大腸がんでも、早期がんではほとんどの場合上昇しないため、早期がんの診断には今のところ役立っていません。
ですから大腸がんなどの診断には、腫瘍マーカーのみでなく、内視鏡検査、超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)といった画像診断などを総合して診断する必要があります。
【早急に画像診断を含めた総合的な検査を】
相談者のように、一度進行大腸がんと診断され、手術を受けられた場合には、CEAは大きな意味をもつと考えるべきでしょう。とくに、手術前にCEAが上昇していた場合には、手術後のCEAの動きには一定の意義があります。
がんが再発した場合やリンパ節、腹膜、肝臓、肺、骨などに転移している場合、CEAは上昇することが多いのです。ぜひ早急に、先ほど述べました画像診断などを受けてください。
万一、転移していても、現在では再手術も可能で、化学療法、放射線治療も大きく進歩してきております。肝転移などに対しては局所の治療も可能で、十分希望がもてますので、専門医に相談してみてください。
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