2010年6月10日
手の痛みで身近なものといえば腱鞘(けんしょう)炎だ。手の使いすぎで、指や手首を痛めた経験を持つ人もいるだろう。以前は「職業病」として知られていたものの、最近は趣味で悪化させるケースも増えている。
新潟手の外科研究所の坪川直人所長によると、同研究所を受診する患者は農業や製造業で働く人が多いという。音楽演奏家や理容師など手を酷使する職業でもなりやすいが、「パソコンや家庭菜園、ゴルフなど、趣味で痛めた方が増えていますね」。仕事以上に没頭し、休まず手を酷使したことが考えられる。
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腱鞘炎は筋肉と骨をつなぐひも状の腱と、腱の浮き上がりを押さえるトンネル状の腱鞘が何度もこすれることが原因だ。炎症で腫れた腱鞘はトンネルが狭くなり、腱が滑りにくくなって痛みが出たりこわばったりする。この初期症状では安静にすることが一番で、悪化すれば取り返しがつかなくなることもある。
それでも手を使い続けると、指が動かせなくなり、握った指を伸ばそうとするとはねるように伸びるばね指(弾発指)や、手首の親指側に激痛が走るドケルバン病などに悪化。「この状態になれば、腱鞘内にステロイド注射をして炎症を抑えます。劇的によくなることが多く、うまくいけば3カ月ほど効果が持続します」と坪川さん。だが、1回だけでは半数以上の人が再発するという。
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何度やっても再発を繰り返せば、坪川さんは手術も勧める。「腱鞘内に注射するわけですから、本当に痛いですよ。手術が嫌で注射し続ける方もいますが、『あんな痛い思いをするなら手術の方がいい』という方もいます」。手術は局所麻酔で1センチから2センチほど切り、腱がスムーズに動くように腱鞘を切開して広げるというもの。20分程度で終わり、早い人なら1週間後の抜糸で痛みは消えることもある。
重度ではないばね指の手術は内視鏡でも行われている。2ミリの穴を二つ開けるだけなので、縫合する必要がなく、手術翌日から指を動かせるという。日常生活や仕事への復帰が早いことがメリットだが、特殊な機器と技術が必要なため、全国的に普及していないのが現状だ。
傷口が治りにくい糖尿病などでなければ入院の必要はないが、手の構造は複雑なので、感覚神経を傷つける可能性も考えられる。同研究所には、他の病院で手術を受けた人が「しびれが取れない」と相談に来ることも。坪川さんは「腱鞘を切開すること自体は簡単ですが、神経の場所を把握していないとまずいわけです。腱鞘炎の痛みに悩まされたら、早めに手の専門医へ相談して下さい」と話している。(斎藤孝則)
◆相談ナビ
日本手外科学会のウェブサイトの中のコーナー「手の外科シリーズ」(http://jssh.gr.jp/jp/publication/tenogekaleaf.html)では、腱鞘炎などの症状や治療法などを分かりやすく解説している。全国の手外科専門医を同学会の名簿(http://www.jssh.gr.jp/jp/about/senmoni-meibo.html)で探すことができる。