2010年7月1日
思い当たる原因がないのに突然始まった肩の痛み。そのうち治まると思っていたら、日ごとに痛みが強まり腕が動かなくなる。40歳代を過ぎるころから患者が増えるため、四十肩や五十肩と呼ばれる症状だ。
聖路加国際病院の田崎篤・整形外科医幹によると、四十肩の痛みは、肩関節の腱板(けんばん)という部分の老化がもとで起きると考えられている。
腱板は肩の関節を取り囲む筋肉を骨につなぐ先端部。老化が進むと腱板は傷みやすくなる。「主に腱板で起きた小さな傷から炎症が起こり、火事のように関節の周りに広がるのが四十肩だと考えられます」と田崎さんは話す。
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重症の場合は、痛みが続く疼痛(とうつう)期(最初の1〜3カ月)、痛みが治まってくるが腕が動きにくい拘縮(こうしゅく)期(3カ月〜半年)、痛みが取れ腕も動くようになる回復期(半年〜2年)という経過をたどる。
初期の典型的な症状は夜間痛。横になるとじりじりと肩が痛み、早朝に痛さで目が覚めることもある。「我慢していると、不眠症やうつ病につながることも。夜間痛が始まったら、早めの受診が必要です」
炎症が治まったのに、肩の関節が固まって動かなくなる拘縮肩にも、注意したい。骨のつなぎ目を包む関節包という組織が炎症で変化し、硬くなるのが原因。腕を動かせず、生活に大きな支障をきたす。
同じ肩の痛みでも、他の異常が潜むことがある。年をとって腱板が切れる腱板断裂は自然に回復することがなく、腱板にカルシウムが沈着する石灰沈着性腱炎は、慢性化することがある。田崎さんは「四十肩と思いこんで見過ごすと、治療が大変になる」と注意を促す。
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「肩の痛みは、放っておけば自然に治ると考えている人が多い」。城東整形外科(秋田市)の皆川洋至・診療部長も指摘する。皆川さんが以前講師を務めた秋田大の研究では、40歳以上の秋田県民770人のうち12%に肩痛の症状があったが、整形外科の受診率は20%にとどまった。四十肩は「とにかく動かしたほうがいい」との思いこみも強いという。
痛みがあれば無理に動かさず、安静にする。生活に影響のない程度の痛みなら、市販の消炎鎮痛薬を服用し、痛みが強ければ、整形外科で抗炎症薬やステロイド剤の処方や注射を受けることが、炎症からの回復を早め、拘縮肩の防止につながる。
痛みがひけば、拘縮をとる体操など運動療法を続けることが必要だ。「手術法の進歩で、完全に固まった重症の拘縮肩も腕の動きが改善できるようになった。あせらず根気強く治療や運動療法を続けることが大切」と田崎さんは話す。(林義則)
◆相談ナビ
日本整形外科学会のウェブサイト内のコーナー「症状・病気をしらべる」(http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/index.html)では五十肩などの症状や治療法が解説されている。腱板断裂などの治療では、内視鏡の一種を使い、患者の負担が小さい手術も広がってきている。肩関節鏡手術研究会のサイト(http://www.shoulder-scs.jp/index.html)で紹介されている。