スポーツの秋。汗をいっぱい流したあと、ビールを飲もうとしたら、あれ? ジョッキを持つ手に違和感が……。そんな症状があったら、いわゆる「テニス肘(ひじ)」になったのかもしれない。
ぞうきんやタオルを絞ったり、手を伸ばしたまま物を持ち上げようとしたりしたとき、肘の外側が痛むようなら、その可能性が高い。正式には「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と呼ばれている。
肘には、上腕の骨と腕の筋肉とをつなぐ「腱(けん)」がいくつかある。うち一つは、骨と接する断面積が小指の爪ほどしかなく、テニスのときに負担が集中しやすい。ここが炎症を起こしたり、部分的に断裂したりした状態がテニス肘だ。
フォアではなく、バックハンドで打った時に負担がかかる。特に、正しくないフォームで強いスピンをかけようと打ち続けると、なりやすい。ゴルフのときも、利き腕でない側が同じような負荷を受けやすく、バスケットボールでボールに回転をかけて投げる動作、剣道でもなる。
加齢とともに筋肉のしなやかさが失われたり、テニスで全身の動きが追いつかず「手打ち」になったりすると、とたんに発症する。
日本テニス協会の調査でも、テニスで痛める部位のトップは肘だった。痛めた部位に占める割合は18歳以下の22%に対して40歳以上では41%とほぼ倍だった。聖マリアンナ医科大の別府諸兄(もろえ)教授は「特に、30歳を過ぎてからテニスを始めた人の発症率が高い」という。
予防にも、なってからの治療にも有効なのがストレッチだ。「気をつけ」の姿勢から、手のひらを外側に向けて手首を曲げ、もう片方の手で中指を引き寄せると、腕の外側の筋肉がよく伸びる。朝昼晩に数回ずつ繰り返すと、筋肉の緊張がほぐれて血流がよくなり、炎症が軽減するという。
肘を一時的に冷やすのも効果的だ。兵庫医科大の田中寿一教授は「専用の冷却スプレーのほか、氷を押しつけてマッサージするようにしてもいい」と助言する。筋肉が冷えると硬くなる気がするが、体はそこを温めようとして、やはり血流が増えるのだという。
テニス肘は、急に重いものを持ち上げたり、年末の大掃除で窓ガラスの高いところを拭いたりしても発症する。仕事や家事でどうしても腕を使わないといけない時は、腕を縛るテニス肘用バンドがお勧めだ。筋肉の付け根への負担が減り、炎症や痛みを和らげられる。スポーツ用品店などで1千〜3千円で売っている。
痛みが6カ月以上続いたり、寝付きが悪くなるくらい痛みがあるなら、炎症を抑える注射をする。スポーツ選手らのように肘を酷使して関節の内部に炎症が広がっているようなケースでは、肘の手術も選択肢だ。(東山正宜)
■相談ナビ
テニス肘の診断や治療についての解説は、日本整形外科学会のサイト(http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/lateral_epicondylitis.html)で。テニス中のけがに詳しい医師は、日本テニス協会のサイト(http://www.jta-tennis.or.jp/tennismedical/)で調べられる。