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広島の声

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岩田守雄さん 直接被爆・距離2.5km(舟入川口町)
被爆時11歳 / 広島県広島市西区1061

被爆地の光景を紹介しています。写真はメッセージと直接関連はありません。  あの恐るべき地獄絵さながらの被爆体験と、その事実に起因する精神的および肉体的苦 痛を広く語り継ぐことは今こそ極めて重要な意義深い活動であると思う。しかし、それが 単なる過去の出来事として感傷的、同情的理解として理解され現実の自己の生き方として とらえられなければ真の語り継ぐ価値が半減する。とりわけ次の世代を担う若者たちが「戦 争とは何か」を客観的且つ冷静に理解し人類の恒久平和を創り出す道筋を探求することが 重要であり急務である。

 戦争は人類の尊厳を否定し歴史と文化文明を破壊する最大の暴力 行為であると思う。特に核兵器使用による放射能被害は人類の存続すら否定するものであ る。そうした過去の戦争の反省に基づいて制定された今日の日本国憲法は、平和を希求す る世界の国民が最も理想としている日本の誇るべきものである。その今や国際的価値を有 する憲法を国の指針として持つ我が国が、その憲法を今、九条を中心に改悪しようと目ろ んでいる政府の動きに対し、激しい憤りを覚える。現行憲法と教育基本法改悪を車の両輪 として、再び日本を戦争のできる国にしようとしているとしか考えられない。国際貢献の ための軍隊派兵の次には武力行使による戦争行為へと泥沼化して行くであろう。

 「歴史は繰 り返される」というが人類の不幸につながる歴史は決して繰り返してはならない。孫や孫 の子どもたちに再び戦争の悲劇を体験させてはならない。ましてや核兵器の被爆者を今後 いかなる国においても作り出してはならない。そのために極めて早急に地球上から核兵器 を廃絶しなければならない。そのことを今の若い人々を中心に、一人でも多くの人々に理 解してもらい、その実現に向けて今こそ行動を起こして欲しいと心から訴えたい。
(2005年)

 「継承活動」に関して

 被爆者の悲惨な体験や苦悩を完璧に追体験し、継承してゆくことは、そもそも物理的に不可能 なことでそれを求めることは継承を不可能にし、否定することにすら繋がりかねない。

 肝要なことは、被爆者の体験と心情を如何に科学的に人類固有の心のエネルギーとして共感し 受け止めることができるかにある。そのエネルギーと共感を如何なる形で継承し、表現するかは その人それぞれの生き方と手法に委ねれば良い。その手法は語り部活動から演劇・音楽・絵画・ 文学などの芸術活動の分野のみならず、あらゆる継承活動に係わる支援活動やボランティア活動 に至るまで、そのすべての分野での活動が継承活動そのものである。その観点に立って若い人々 は「継承」をpassiveなものとしてではなく、自己表現の主体的位置付けとして被爆者体験を受 け止め、被爆者と共有する自分の心情とそのエネルギーを率直に有りのまま表現し、訴え、自信 を持ってactiveに継承活動に取り組んで欲しいと願う。そのためには歴史的真実を科学的にきち んと認識すると共に、人間として心の叫びに共感できる豊かな感性を培ってもらいたい。

 一方、被爆者は「自分の体験の悲惨さや苦悩は実際に同じ体験をした者でなければ解らない。

 今更、自分の悲惨な思い出や過去の生き様を思い出し、語る気にはなれない」と口を閉ざすので はなく、自分の心からの願いを実現するために生存被爆者が減少しつつある今こそ、若い世代の 人々を信頼して体験を語り、その思いと願いを彼らに委ねることが被爆者の責務ではないかと思 う。

 私自身、昨年(2009年6月)永年抱き続けていた大きな不安の一つであった胃癌の発症が発 覚し、その意を一層強くしているので追記として加筆した次第である。

  2010.3.10
(2010年追記)