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紙面から from Asahi Shimbun

【(核なき世界へ)被爆国からのメッセージ:2 NGO代表・川崎哲さん】 (2010年11月4日 朝刊)

 被爆者が世界を一周し、体験を証言する航海を2008年に始めました。
 オバマ米大統領の昨年4月のプラハ演説以降、寄港地で明らかな変化がありました。メキシコやアイルランドで軍縮担当の政府高官が出迎えてくれるなど、国レベルで歓迎されるようになったのです。
 オバマ氏の最大の功績は、(プラハ演説で掲げた)「核なき世界」が国際社会共通のアジェンダ(政策課題)だと示したことでしょう。
 ただ、オバマ政権は核兵器関連予算を増やすなど、後退も見られます。米国内ではいま、核軍縮派と現状維持派が綱引きをしている状況です。見逃せないのは、現状維持派が核軍縮を遅らせる口実に「日本が核を必要としている」ことを挙げている点です。
 日本は「核の傘なんていらない」と言わないといけない。せめて「先制攻撃に使わない」「核攻撃抑止を核保有の唯一の目的にする」ぐらいは米国に求めるべきです。しかし日本政府は今まで、現状維持派に加担する発言に終始してきました。いま、被爆国の日本が、核廃絶を促す方向で発言しないのは歴史的に責任が重いと思います。
 オバマ氏が今回の来日で広島、長崎に来られないとしても、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議がある横浜で被爆証言を聞く機会をつくればいい。未臨界核実験は許されないが、「裏切りだ」と批判するより、できることをやるべきです。
 航海で、被爆者自身が体験を語ることには何物にも代え難い力があると実感しました。ベネズエラのラジオ番組ディレクターは番組収録後、「日本のみなさんが原爆を忘れても、私たちが伝えます」と言ってくれました。被爆者の言葉は、国のリーダーをも奮い立たせるはずです。
 08年の最初の航海に参加した100人の被爆者のうち、私が知るだけで4人が亡くなりました。時間がありません。はっきりした記憶を持つ被爆者が世界へ語る最後のチャンスは、あと1、2年だと思っています。
 (聞き手・山下奈緒子)

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 かわさき・あきら 41歳。大学時代の1991年に湾岸戦争反対の学生グループを結成する。軍縮NGO「ピースデポ」事務局長を経て、2003年から国際交流NGO「ピースボート」共同代表。

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