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紙面から from Asahi Shimbun

【2011年の夏】
長崎市「脱原発」平和宣言、各国評価割れる (2011年8月10日 朝刊)

 長崎市の平和祈念式典で9日読み上げられた平和宣言。「脱原発」を目指す被爆地の主張は、国内外でどう受け止められたのか。

 長崎市の平和祈念式典には核保有国の米、英、仏、ロシアを含め、過去最多の44の国や欧州連合の代表が参列した。

 ●核保有国は淡々
 核大国ロシアのベールイ大使は「原子力エネルギーはまだまだ世界で重要な役割を担う。日本も例外ではない」と指摘した。フランスのフランソワグザビエ・レジェ臨時代理大使も「フランスの電力の原発依存は80%。フクシマを教訓に安全性を高め、原発を使い続けないとならない」。英国のデービッド・フィトン臨時代理大使は式典前に「原子力は今後もエネルギー政策の軸」と話した。
 原爆投下国の米国から初参列したズムワルト臨時代理大使(首席公使)は平和宣言にはコメントしなかったが、「米政府代表が式典に出ることで、オバマ大統領の『核兵器のない世界』のビジョンをはっきり示すことになればいい」と語った。

 ●「次世代が評価」
 段階的な脱原発を決めたドイツ。アレクサンダー・オルブリッヒ総領事は「原発は100%安全とはいえない。安全性にわずかでも不確実な部分があれば、それだけで問題。ドイツ人の多数派が原発にはもう頼りたくないと考えている」と話した。アフリカ南部ナミビアのラッキー・ガワナブ臨時代理大使は「核の拡散に反対。核兵器だけでなく、原発もだ。平和宣言は世界に、何より次世代に評価されるだろう」と話した。

 ●国内、受け止め様々
 被爆地として長崎と足並みをそろえてきた広島市。市内の平和記念資料館で9日、広島県原爆被害者団体協議会の坪井直(すなお)理事長(86)が長崎市の式典の中継を見守った。
 今年の広島市の平和宣言は、国にエネルギー政策の見直しを求めながら「脱原発」までは踏み込まなかった。坪井さんは「松井一実・広島市長は世論に遠慮があったのかもしれない。だが『脱原発』を願う被爆者の思いとは相いれない」。長崎の平和宣言については「『再生可能エネルギーの開発を進めることが必要』との一文は、私もつくづく感じる。原爆の惨禍から復興した広島や長崎がそうであったように、人間には乗り越えていく力がある」と語った。
 宣言は「脱原発」に加え、被災地へのエールも盛り込んだ。東京電力福島第一原発に近い福島県浪江町から同県郡山市に避難している紺野芳雄さん(59)は「言及はありがたい」としながら、思いは複雑だ。「原爆を落としたのに責任を認めなかった米国。その政策にほんろうされ、日本に原発が出来た。今こそ、日本人が自分たちの考えで動くべきなのに、今の国の姿勢でそれが可能だろうか」

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