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紙面から from Asahi Shimbun

【2012年の夏】
核なき明日、心一つ 英仏大使、平和記念式に初の参加 広島、被爆67年  (2012年8月6日 夕刊)

写真 「平和の灯」がゆらめく前で、原爆慰霊碑に向かって祈る人たち=6日午前、広島市中区、水野義則撮影

 広島は6日、米国の原爆投下から67年の「原爆の日」を迎えた。広島市中区の平和記念公園で平和記念式があり、松井一実市長は平和宣言で核兵器廃絶の決意を世界に訴えた。東京電力福島第一原発事故に触れて、市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策の早期確立を政府に求めたが、「脱原発」には踏み込まなかった。

 平和宣言で松井市長は昨年に続き、13歳で遺体の処理にあたった男性など公募で選んだ3人の被爆者の体験を引用。後遺障害や偏見に苦しみながら生き抜いた被爆者の思いを伝えた。
 昨年3月11日に起きた東日本大震災や原発事故で苦しむ被災者を、67年前のヒロシマの人々と重ね合わせ、「心は共にあります」と呼びかけた。
 核兵器廃絶をめぐり、北東アジアの不安定な状況を認識し、リーダーシップを発揮するよう政府に要求。併せて、原爆投下後に放射性物質とともに降った「黒い雨」の援護地域を拡大するよう政治判断を求めた。
 野田佳彦首相は、「脱原発依存の基本方針のもと、中長期的に国民が安心できるエネルギー構成の確立を目指す」とあいさつした。
 被爆者の平均年齢は78歳を超えた。式では、この1年間で死亡が確認された被爆者5729人の氏名を掲載した名簿を、遺族代表と松井市長が原爆死没者慰霊碑に収めた。
 式には約5万人(市発表)が参加した。外国代表は71カ国と欧州連合が集まり、うち初めて参加したのは8カ国。米国は3年連続の参加となり、ジョン・ルース駐日大使が参列。核保有国の英国とフランスの駐日大使が初めて出席したほか、ロシア、事実上の保有国イスラエルも参列した。原発事故で住民約2万1千人が各地に散り散りとなっている福島県浪江町の馬場有(たもつ)町長も、広島市との交流を求めて参列した。
 (後藤洋平)

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