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紙面から from Asahi Shimbun

【2013年の夏】
(核といのちを考える) 核、軍事的には無用 パウエル元米国務長官インタビュー (2013年7月10日 朝刊)

写真 インタビューに答えるコリン・パウエル氏=米ワシントン、ランハム裕子撮影

 米軍制服組トップと国務長官を務め、米国の外交・安全保障政策の中軸を長年担ったコリン・パウエル氏が朝日新聞のインタビューに応じ、核兵器は「極めてむごい兵器」であるために使えず、軍事的には無用な存在だと語った。米国の核戦略の最前線にいた元軍人による核兵器不要論として注目される。

 ■「広島・長崎を思い出せ」印パ対立を仲裁

 パウエル氏は、核武装したインドとパキスタンの間で2002年に緊張が高まった際、パキスタン首脳に広島、長崎の被爆後の悲惨な写真を思い起こすよう説いて、対立緩和に導いた秘話も明かした。被爆地の記憶が、実際の国際政治に影響を与えたとの証言だ。

 この対立では、両国が核による威嚇も辞さない恐れがあった。国務長官だったパウエル氏はパキスタン首脳に電話し「あなたも私も核など使えないことはわかっているはずだ」と自重を促したという。さらに「1945年8月の後、初めてこんな兵器を使う国になるつもりなのか。もう一度、広島、長崎の写真を見てはどうか」と迫ると、パキスタン側は「ノー」と答えた。インド側も同様な反応だった。こうした説得の結果、危機は去った、と振り返った。

 パウエル氏は、かねて核兵器は不必要との考えを示していた。今回その理由を詳しく問うと「極めてむごい兵器だからだ」と明言し、「まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば基本的には無用だ」と強調した。

 北朝鮮への抑止策としては「(米国の)通常兵力は強力であり、核兵器を使わなければならないことはない」と主張。

 核の抑止力そのものは否定せず、「政治的な意味」があるため北朝鮮は核に頼っているとした。ただ、核を持つことは、むしろ自殺行為だと強調した。

 オバマ米大統領が6月のベルリン演説で、配備済みの戦略核弾頭をさらに3分の1削減する方針を表明したが、交渉相手のロシアが米の欧州ミサイル防衛(MD)計画と核削減を絡めていることについて、「MDに対するロシアの態度は、米ロの戦略核の保有量を削減してきた過去10年の二つの削減条約の成立を妨げなかった。MDと保有量の削減は今後の交渉に任せるべきだ」と述べた。(ワシントン=論説副主幹・吉田文彦、アメリカ総局長・山脇岳志)

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 詳細は明日のオピニオン面に掲載します。

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 コリン・パウエル氏 76歳。退役陸軍大将。1991年の湾岸戦争では米軍統合参謀本部議長としてクウェート奪還作戦を指揮。2001〜05年にブッシュ政権で国務長官を務め、核戦略や核軍縮交渉にも携わった。イラクへの単独攻撃を主張する強硬派が政権内に多い中、最後まで開戦に慎重だったが、最終的には支持。03年に国連で演説し、イラクが大量破壊兵器を保有する証拠を挙げたが、後に情報は虚偽だったと判明。この演説を自ら「汚点」と認めている。

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 広島・長崎、そして福島の核被害。「核と人類は共存できるのか」を問い直す時代がきています。核の恐怖を感じないですむ世界をいかに実現していくか。読者の皆さんと考えます。デジタル版(http://t.asahi.com/bbke)も開設しています。

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