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紙面から from Asahi Shimbun

【2013年の夏】
(ひと) リンダ・ホーグランドさん ドキュメンタリー映画「ひろしま」監督の米国人 (2013年7月19日 朝刊)

写真 リンダ・ホーグランドさん=早坂元興撮影

 不思議な映画だ。悲惨な原爆がテーマなのに、映像は美しい。  被爆して亡くなった人たちの洋服やくつなどの遺品を撮る写真家石内都(いしうちみやこ)さんのカナダでの写真展を追った作品だ。遺品の持ち主の生前の姿を想像する来場者たちを通して、犠牲になったのは一人ひとり顔のある人間だったことが、静かに浮かび上がっていく。

 「私はドキュメンタリーにつきまとう客観性には興味がない。感性、主観しか信頼しない」。20日から始まる東京・岩波ホールでの上映も「映画を体験して」と言う。

 宣教師の娘として京都で生まれ、1960〜70年代に山口、愛媛で地元の小中学校に通った。10歳の時、米国が原爆を落としたと教わった。クラス中の目が一斉に自分に向いた。「米国の戦争責任を背負わされた」瞬間だった。  17歳で米国に戻るものの、「精神的には帰国できなかった」。米国は正義の味方という「神話」を信じることができなかったのだ。

 大学卒業後は日本映画の字幕翻訳者として活躍した。映画製作は7年前から。テーマは、特攻隊、日米安保条約、そして原爆。3作品を世に送り出した。二つの国のはざまで育ち、抱えることになった「違和感」が感性の源だ。  「これで私の太平洋戦争は終わった」。幼い日のトラウマから解放され、すでに鶴の恩返しをモチーフにした次作を製作中だ。

 (大久保真紀)

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 Linda Hoaglund

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