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紙面から from Asahi Shimbun

【2013年の夏】
被爆者・丸山真男、悔悟の肉声 録音、平和資料館へ (2013年7月31日 朝刊)

写真 丸山真男が被爆体験を語ったインタビューの録音テープ(下)

「その日、何をしていたのか、全く覚えていない」。戦後日本を代表する政治学者の丸山真男(1914〜96)が、広島での被爆体験を語った録音テープが確認され、広島平和記念資料館(広島市中区)にコピーが寄贈された。

丸山は東京帝大助教授になったが、太平洋戦争が始まると、軍に召集された。原爆が投下された45年8月6日の時点では、広島の陸軍暁部隊情報班の1等兵だった。テープは、中国新聞記者だった故林立雄さんが69年、東京都内でのインタビューを録音したもの。

 証言は約2時間にわたる。丸山は、爆心地から約4・5キロ南にある広島市宇品町(現・南区)の司令部で被爆時の様子を「突然、目がくらむほどの閃光(せんこう)が走った。参謀の軍帽がプーッと飛んだ」と描写。巨大なきのこ雲や傷ついた市民たちの様子のほか、被爆翌日に「原爆を投下した」と伝える米国の短波放送を傍受し、上司に報告したエピソードも明かしている。

 丸山は戦後、著作などであまり被爆体験に触れなかった。「原爆の意味をもっと考えなかったことは懺悔(ざんげ)です」「戦争については論じたが、原爆を論じなかった。至近距離からの傍観者」などと、悔悟の念も率直に語っている。

 テープは広島県廿日市市にある林さんの自宅に保管されていた。林さんは昨年12月に死去。遺族が今年2月、資料館にテープのコピーを寄贈した。長女のかおりさんは「貴重な音源なので多くの人に聴いてほしい」と話す。資料館は今秋以降に公開することも検討している。

 (後藤洋平)

 ◆キーワード
 <丸山真男>
 大阪市生まれ。東京帝大法学部卒業後、同助教授などを経て東大教授に。1946年に雑誌「世界」に「超国家主義の論理と心理」を発表。日本型ファシズムと日本政治を分析して戦後の政治学を確立し、論壇でも大きな影響力をもった。主な著書に「日本政治思想史研究」(52年)、「戦中と戦後の間」(76年)など。

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