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紙面から from Asahi Shimbun

【2013年の夏】
 (ひと) ロバート・ジェイコブズさん 広島を拠点に世界の核被害者をつなぐ米国人学者 (2013年8月6日 朝刊)

写真 ロバート・ジェイコブズさん=筋野健太撮影

 広島市郊外の古寺、三滝寺は境内の滝の水が平和記念式典で手向けられることで知られる。その近くに居を移し7年。「核と科学技術史」を専門とする歴史学者として、世界の核実験場や原発事故の被害地で聞き取りを重ねてきた。

 米ソが何万発もの核兵器を向けあった1960年代後半、シカゴの小学校で核攻撃に備える訓練を重ねた。「大人になるまでに世界は終わる」。恐怖心から、核問題の関連本を読みあさった。大学時代は研究と反核運動の二足のわらじ。「気がつけば人生の大半が広島と関わっていた」

 世界を回る中で核被害者は同じ道をたどると気づいた。「政治家や専門家から『大丈夫だ』と信じ込まされ、10年、20年後に異なる現実を突きつけられる」。だまされたことにみな傷ついていた。

 グローバル・ヒバクシャ・プロジェクト――。教鞭(きょうべん)をとる広島市立大大学院生ら被爆3世と、ビキニ水爆実験に巻き込まれたマーシャル諸島の若者を「オーラルヒストリー」の語り手に育て、スカイプで交流させる取り組みを始めたのは、その循環を崩したかったからだ。来春、マーシャル諸島で世界の核被害地の孫世代がじかに会うイベントを催し、輪を広げる。

 6日朝、いつものように原爆ドーム前の「ダイ・イン」に加わり、誓う。「孤立した核被害地をつなぐ。次の犠牲を減らすために」

 (武田肇)

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