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紙面から from Asahi Shimbun

【2014年の夏】
(核といのちを考える)国際司法裁の勧告的意見、元裁判長「廃絶へ強い意図込めた」 (2014年7月31日 朝刊)

モハメド・ベジャウィ氏 モハメド・ベジャウィ氏

 国際司法裁判所(ICJ)が1996年に「核兵器の使用・威嚇は人道法違反」として決定した勧告的意見をめぐり、当時の裁判長が朝日新聞の取材に真相を初めて明かした。「解決の道は核廃絶しかない」とし、強い意図を込めた究極の決定だった、と語った。この勧告的意見は核の非人道性に注目する核兵器禁止の国際的機運の原点となっている。

 元裁判長はアルジェリア人のモハメド・ベジャウィ氏(84)。「核兵器の使用・威嚇は一般的に人道法違反」「自衛の極限状況では合法か違法か判断できない」と併記した意見の中核部分をめぐり、判事14人の賛否は7対7に割れた。ベジャウィ氏が賛成の決定票を投じ、採択された。

 ベジャウィ氏によると、勧告的意見は次の考え方で併記型となった。「文民を標的にしない」「兵士に不必要な苦痛を与えてはならない」とする国際人道法の規定などに照らすと、核使用・威嚇の違法性は高い。一方、国際法は国家の自衛権を認めている。両者は「矛盾した状態」にあるが、国際法の現状を踏まえて「一般的には違法、極限的状況については判断回避」とする――。

 勧告的意見はこの矛盾状態の打開策として、核不拡散条約(NPT)6条の「誠実な核軍縮の交渉義務」を引用。6条が単なる核軍縮交渉の義務だけではなく、核廃絶という結果をもたらさなければならない「二重の義務」を課しているとの見方を示した。同氏は「NPT加盟国が『二重の義務』を実行することで核をめぐる世界の矛盾を消していかなければならない」という意図を込めた、と説明。(併記型の勧告的意見に)真の狙いの条項を埋め込むことに成功した、と明かした。

 ■論議活発化狙い、国際社会へ発信
 《解説》国際社会では核兵器の非人道性に焦点をあてた動きに拍車がかかっている。転機となったのがICJの勧告的意見だった。

 ICJに意見を求めたのは国連総会だった。冷戦後の核軍縮を模索していた1994年末の決議で、核兵器の使用・威嚇の違法性について「世界法廷」の見解を仰いだ。核廃絶への動きを活発化させるため、勧告的意見を出した責任者としての考えを国際社会に伝える――。元裁判長が朝日新聞に明かしたのは、こうした意図があるとみられる。

 核実験場となったマーシャル諸島は4月、NPT6条の不履行を理由に核保有国をICJに提訴。米ニューヨークで来年開かれるNPT再検討会議でも、核の非人道性や「二重の義務」がテーマとなるとみられる。発言は論議に影響を与えそうだ。
 (論説委員・吉田文彦)

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