english

ここから本文エリア

紙面から from Asahi Shimbun

【(核なき世界へ)被爆体験、沈黙破る時 3割、最近5年で初証言 被爆65年アンケート】 (2005年7月29日 朝刊)

 広島、長崎の原爆で被爆した人たちを対象に、朝日新聞社は「被爆65年アンケート」を実施し、1006人から回答を得た。2005年以降に体験を初めて家族以外に話したと答えた人が約3割にのぼり、「語り伝えが核兵器を使わせない力になる」とした人は8割近くになった。惨劇を繰り返すまいと、原爆投下から60年以上たって被爆証言に踏み切る人が相次いでいる実態が明らかになった。

 05年以降、初めて被爆体験を家族以外に語ったと答えた人は322人(32%)。世代別の初めて語った人の割合は、80代が36%と最多で、90代は33%、70代が29%。60代は14%にとどまった。
 高齢になり、「いま伝えなければ」と決心した人が目立った。長崎で被爆し、姉の遺体を自ら火葬した埼玉県の男性(78)は今春、初めて人前で証言。「残り幾ばくもない人生で体験を引き継ぐことを重要と思うようになった」という。
 一方で、被爆者としては最も若い世代の60代を中心に、社会的なしがらみが被爆体験を明かせない理由のひとつであることも浮かんだ。上場会社の役員時代は広島での被爆を隠し通してきた神奈川県の男性(67)は「定年と同時に、隠していては駄目だ、原爆の結果を知らせなければ、と思い直した」とつづった。地域の証言の会に参加しながらも、「息子が結婚するとなると、差別を心配して口を閉じてしまう」=胎内被爆者の東京都の男性(64)=と悩みを打ち明けた人もいた。
 被爆体験の語り伝えが核兵器を再び使わせない力になるかとの質問に対しては「そう思う」が76%に達した。核再使用阻止への使命感が、語ることの原動力の一つになっている様子がうかがえた。
 昨年4月のプラハ演説で「核なき世界をめざす」と表明したオバマ米大統領の取り組みに期待する人は78%に達し、オバマ氏の被爆地訪問を希望する人も83%いた。
 日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳(てるみ)事務局長は「被爆者であることを明かす社会的マイナスより、体験を後世に役立てられずに命が尽きることを悔しいと思う気持ちが強くなったことが背景にあると考えられる」と話した。

     ◇

 本社が05年に日本原水爆被害者団体協議会の協力を得て実施したアンケートの回答者のうち、自由記述欄のメッセージ公開に同意した1520人を対象に調査。1006人(66%)から回答があった。

 ■2005年のアンケート以降に「被爆体験を家族以外に初めて話した」
     はい  いいえ 05年より前から話していた・無回答など  
60代  14%  25   61                 
70代  29   17   54                 
80代  36   13   50                 
90代  33   17   50                 
 (小数点以下四捨五入のため合計が100にならない場合がある)