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紙面から from Asahi Shimbun

  【 「放射線の影響不安」55% 被爆者5762人が回答 朝日新聞社アンケート 】 (2015年8月2日 朝刊)

写真 <近づくあの日> 原爆投下から70年となる9日を前に、長崎市松山町の爆心地公園で長崎県被爆二世の会のメンバーらが「原爆落下中心地碑」を清掃した=1日午前9時36分、池田良撮影

 広島、長崎へ原爆が投下されてから6日、9日で70年になる。朝日新聞は約2万2千人の被爆者を対象にアンケートの冊子を送り、5762人から有効回答を得た。3193人(55・4%)が「健康状態が悪くなると放射線の影響だと不安になる」と回答。70年が経とうとする今も被害者を苦しませる「核兵器の非人道性」が浮き彫りになった。

 冊子は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の協力を得て傘下団体を通じて発送。広島1542人▽東京1244人▽神奈川550人▽長崎243人など46都道府県で暮らす被爆者から回答が届いた。平均年齢は81・1歳で、被爆60年の調査から8・7歳上がった。

 放射線の被害をめぐっては2801人(48・6%)が「被爆の影響で子や孫の健康に不安を感じる」と回答。放射線の遺伝的影響は確認されていないが、世代をまたぐ被害を気にしながら歳月を重ねてきた実態が改めて分かった。

 冷え込む米ロ関係やプーチン大統領の「核使用準備発言」といった国際情勢を受け、核兵器廃絶に悲観的な見方も。3656人(63・5%)が「この10年で核兵器が使われる危険性が増した」と答えた。米国の「核の傘」に入る日本の安全保障政策については、1474人(25・6%)が「おかしい」とした一方、2519人(43・7%)が「やむを得ない」と回答した。

 被爆60年の調査対象は4万人余りで、約1万3千人が回答。被爆体験を語れる人も減るなか、最近10年でつらかったこととして「原爆被害の風化」を挙げた人は1246人(21・6%、複数回答)。体験が次世代に「十分」「ある程度」伝わっているとしたのは2214人(38・4%)で、「全く」「あまり」伝わっていないとした人は2919人(50・7%)だった。

 前回調査の後に起きた東京電力福島第一原発事故に関しても質問。原発についての賛否は「反対」「どちらかと言えば反対」とした人が計3842人(66・7%)を占めた。
 (大隈崇)

 ■<視点>70年後も、残る苦しみ

 アンケートで鮮明に浮かんだのは、被爆から70年を経てもなお消えない放射線への不安だ。核兵器は瞬間的な破壊だけでなく、被害者のその後の人生に長く影響を及ぼし続ける。核軍縮が進まぬなかで、いまの国際社会が廃絶に向けて焦点を当てる「核の非人道性」の本質の一つは、まさにこの点にある。

 今回は福島第一原発事故後としては初めての被爆者に対する大規模調査となった。「核」は人類に何をもたらすのか。その体験を背負ったのが被爆者であり、その声は貴重な教訓だ。原発への反対が3分の2に達した意味は重い。

 被爆者の平均年齢は80歳を超えた。被爆者の一人は自由記述欄に、「私たちの遺書のようなものだと思って」とつづった。広島と長崎の記憶を語り継ぎ、「核といのち」を問うていく。今回の調査と取材は、その営みととらえてもらいたい。

 (核と人類取材センター事務局長・副島英樹)