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紙面から from Asahi Shimbun

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核なき世界へ 被爆国から 2012(5)
 映画監督 鎌仲ひとみさん

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 ■平和利用なんて欺瞞

 脱原発の立場からカメラを回し続けています。きっかけは湾岸戦争の取材で訪れたイラクでした。米国が落とす劣化ウラン弾の影響で、子どもたちががんや白血病で死んでいく。米国のウラン濃縮工場にたまる膨大な劣化ウランが兵器になっていました。

 原発の電気で暮らす自分もかかわっている問題だと思いました。日本は米国から濃縮ウランを輸入しています。米国は「健康被害との因果関係を示す証拠はない」と言いますが、米国内の核施設周辺でがん患者が多数発生し、妊婦が流産する。製造過程で放射性物質が放出され続けたのです。

 六ケ所村を含めすべての再処理工場も同じ。内部被曝(ひばく)によって蓄積されるから怖い。核の平和利用なんてありえません。欺瞞(ぎまん)です。

 原爆が投下され、国は認定の基準を距離で区切ります。内部被曝の影響も認めなかった。福島で今、起きていることも同じでは。国策として原発を推進した国にも責任があるのに、一定の距離で範囲を区切り、被害を過小評価し、補償を最小限にしようとしている。

 しかも、安全対策も再生可能エネルギーへの転換に向けた長期ビジョンも不在のまま、大飯原発の再稼働を決めてしまった。内部被曝という目に見えない放射性物質との「戦争」が進行中なのに、です。

 まずは広島・長崎から福島まで、あらゆる「被ばく者」がつながり合い「核廃絶」を訴えてほしい。劣化ウラン弾の廃絶も急務です。石油にもウランにも頼らない、風や日光でエネルギーを作るのが世界の流れになると信じています。

 「戦争」を止めるか、加担するか。いまを生きるすべての人たちに問われていると思います。(聞き手・清水大輔)

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 かまなか・ひとみ 58年、富山県生まれ。早稲田大学を卒業後、ドキュメンタリー制作の現場へ。放射能汚染や原発の問題を追及してきた。広島や福島の「被ばく者」の今に迫った新作「内部被ばくを生き抜く」が全国で上映中。