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紙面から from Asahi Shimbun

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核なき世界へ 被爆国から 2012(6)
 物理学者 小沼通二さん

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 ■対話し声上げ続けよう

 20代のときのことです。師と仰ぐ、後にノーベル物理学賞を受賞する朝永振一郎さんの言葉が、議論のきっかけとなりました。

 「日本が核兵器にどう向き合うかは、政治家や外交官だけでは解決できない。物理学者も考えるべきだ」。物理学の研究が、核開発の原点になってしまったことへの悔いがきっとあったのでしょう。

 核兵器は非人道的な大量破壊兵器で、依存すればゆがんだ危険な世界になってしまう。若い時に確信した思いは今も変わりません。

 戦争や核兵器はなくならないと言う人がいる。でも、考えてみて下さい。日本は戦国時代や江戸末期、国内で戦争をしていましたね。いま国内で戦争が起きる可能性があると思う人はおよそいないでしょう。地球上だって同じです。オバマ氏が米大統領になったように、核廃絶は世界的な流れ。訪れる好機を逃さないよう、普段から意識して考えることが重要です。

 一方、福島で原子力発電所の事故がありました。原発は運転すれば放射性物質を排出し続け、10万年も管理しなければならない。こんな責任をだれが持てるでしょうか。技術として完成していないということです。事故は起きない、絶対に安全ということはありません。原発に将来はないと思います。

 もっとも、物理学者の間でも原発への見方は分かれます。意見の違いはあるのが普通です。気になるのは対話がほとんどないことです。閉塞(へいそく)感が漂っている。

 学者に限った話ではありません。核兵器も原発も、一人ひとりが自分の問題として受け止め、対話をする。そうやって声を上げ続ける。必ず世界は変わると信じています。(聞き手・神田大介)

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 こぬま・みちじ 81歳。物理学者(素粒子理論)、慶応大名誉教授。元日本物理学会長。1992年からの10年間は核廃絶と平和実現を求める科学者の国際会議「パグウォッシュ会議」評議員を務める。