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紙面から from Asahi Shimbun

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核なき世界へ 被爆国から 2012(7)
  シンガー・ソングライター Metisさん

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 ■豊かさ危険隣り合わせ

 広島に住む祖母(81)は14歳の夏、爆心地から800メートルで原爆の被害に遭い、肉親のほとんどを失いました。私の母は、2008年にがんで亡くなりました。祖母は「戦争のせいかねえ」と言う。仕事のしすぎか、原爆の影響か、分からないんですけどね。

 戦争や、命の大切さを歌う楽曲を作っています。広島で長く語り部をされた沼田鈴子さんに背中を押され、彼女の話を基に、07年「アオギリの木の下で…」を出しました。その沼田さんも昨年7月亡くなった。

 被爆3世の私にどんな影響があるのか分からないけど、こんな恐怖は私の世代でストップしてほしい。そんな思い、東日本大震災後に強くなりました。

 ライブで訪れた福島で、体にどれだけ影響があるのだろうという声を聞きます。平和で便利な世の中の裏側で、いつも危険が隣り合わせ。普段は気付きにくいけど、3月11日に教えられました。

 原発へは、いろんな意見があるのは知っています。でも、この先科学が発展しても結果的には危険と隣り合わせで暮らすっていう時代は私は築きたくない。

 小学生の前で話をするとき、「もし明日、お父さんお母さんが一瞬でいなくなったり、お友達が悲しんでたりしたらどう思う?」って想像してもらうんです。豊かさや平和の裏に、たくさんの恐ろしい悪魔が君臨している。退治するにはどうしたらいい?って。

 核兵器や原発をどうするか。いくら考えても答えは出ない。それに、広島ででさえ、忘れ去られている気がする。伝え、伝わるのは難しい。でも、いろんな知恵を持つ人たちとつながりながら、伝えていきたい。それが、次の世代に対する私たちの使命だと思う。(聞き手・宮崎園子)

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 メティス 84年、広島市出身。06年メジャーデビュー。レゲエやソウルがルーツ。母を歌った曲も収めたミニアルバム「めぐる愛の中で」を6月27日にリリース。東日本大震災の被災地でボランティアをしながら音楽活動を続ける。