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紙面から from Asahi Shimbun

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核なき世界へ 被爆国から2013 その2(2)  
講談師 神田香織さん   (2013年6月3日掲載)

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 ■死ぬまで訴える覚悟

 原爆の悲惨さを描いた漫画「はだしのゲン」(中沢啓治作)を27年前から講談で演じています。前座修業を終えて戦争を語ろうと決めたものの、重すぎるテーマに悩んでいた時、原作に出会いました。「大変だけど前向きに生きる」。主人公の少年ゲンの姿は聞く人を元気にしてくれる。私も生き方を教わりました。

 10年前からは(1986年の)チェルノブイリの原発事故を題材にした講談も始めました。原発事故は形を変えた原爆です。芸人仲間から「お金にならない仕事をして変わってるね」と言われたこともありますが、原爆も原発事故も二度とあってほしくないと思い、語り続けてきました。

 講談は落語と違ってやる人こそ少ないですが、語りにはパワーがあると信じていました。それなのに、故郷の福島で2年前、原発事故が起きた。全く役に立たなかったという無力感と悔しさに襲われました。

 でも、ここであきらめるわけにはいかない。原爆で被爆した広島、長崎の人たちはどれだけ苦しい思いをしたか。福島の人たちがどれほど苦しんでいるか。核は絶対に人間とは一緒にやっていけない。今、学ばなければ、また核の被害が起きてしまう。

 「3・11」の後、講談や講演を聴きに来た人たちに、「アッアッ」と短く力を込めた声を出す練習をしてもらっています。政府は原発を再稼働させようとしているし、アメリカの核の傘への依存も変えようとしない。でも、核のない世界を願う私たちだけが頑張ってもダメ。一人一人が前向きになって、頭の中の考えを声に出してほしい。そのための発声練習です。

 最近、呼ばれた先でこう言っています。「闘いは明るく楽しくしつっこく」。死ぬまで訴えて歩かなきゃいけないって、もう覚悟を決めました。(聞き手・宋光祐)

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 かんだ・かおり 1954年、福島県いわき市生まれ。講談師。戦争や防災をテーマにした社会派の講談を多く演じている。7月には北海道や大阪で「はだしのゲン」を語る予定。