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紙面から from Asahi Shimbun

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核なき世界へ 被爆国から2013 その2(6)  
クリエーティブディレクター 箭内道彦さん   (2013年6月7日掲載)

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 ■多様な声 つなぎたい

 去年の末から、「風とロックLIVE福島CARAVAN日本」という音楽イベントで全国を旅しています。趣旨に賛同するミュージシャンらが集まり、トークやライブをする。福島の人たちに「みんな忘れていないよ」というメッセージを伝える旅でもあります。

 「風とロックLIVE福島」は、広島や長崎、沖縄、神戸など、戦争や大きな災害を経験した各地を巡り、開いています。福島には、原爆と原発を一緒にしてほしくないと考える人もいる。でも、どちらも地域や家族をバラバラにする放射線被害を引き起こした点は同じです。

 古里の福島に原発が多いことは知っていましたが、内陸の郡山出身だったので、その危険も安全も、恩恵も考えたことがなかった。ヒロシマやナガサキも教科書で知っていたけど、自分のこととして受け止められていませんでした。

 でも、現実問題として、人間の住めない区域が日本にできてしまった。故郷が「フクシマ」と書かれるようになって、「これまで他の地域の人々が苦しんでいたとき、どれだけ真剣に考えられていただろう」と自問するようになりました。

 「核兵器が平和を維持している」「原発が繁栄をもたらす」という主張も理解できます。逆に、反原発を訴えるのも尊いと思う。しかし、それぞれの立場の人が意見を一方的に言うばかりでは、何かを生み出せる気がしない。

 ポリシーの差を超えて、いろんな人の思いを受け止めたところに、良い答えが見つかるはずです。僕は、人と人とをつなぐ人になりたい。「赤」と言う人と「青」と言う人がいたら、「黄色もあるよ」って言えるような。依頼主と社会とをつなぐ広告屋だから、そう考えるのだと思います。  (聞き手・中崎太郎)

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 やない・みちひこ 1964年、福島県郡山市生まれ。クリエーティブディレクター。博報堂を経て2003年に独立。広告業のほか、福島出身者のバンド「猪苗代湖ズ」を結成し、福島への思いを歌う。